儚くも美しい恋の形

 本作は切なくも美しい青春ラブストーリーです。主人公である「私」は、ある冬の日に彼と出会います。静かに、しかし確かに育まれていく彼への想い。その純粋な気持ちは、時を経ても変わらぬものとして彼女の中にあり続けます。

 彼女の視点から語られる淡い恋心と、その思いが報われることのない切なさ。新たな転入生の登場によって三人の関係は大きく変化し、彼女はさまざまな感情に揺れ動きます。その中で彼女が自らの気持ちと向き合い、選択をする姿が描かれています。

 恋愛の切なさをリアルに描きながらも、恋する気持ちの素晴らしさを肯定している点がこの作品の魅力です。「私」が感じる痛み、嫉妬、諦めきれない思いが、まるで自分の心の奥底を覗かれるように繊細に描かれています。好きという気持ちを大切に持ち続けることで、いつか大輪の花を咲かせる日が来る。報われない恋の中にも希望を見出す力強さを感じさせます。

 甘酸っぱいだけでなく、ほろ苦さも伴う青春の一ページ。読後には、叶わなかった恋もまた人生の大切な宝物であることに気づかされます。

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