第3話 ユウジ、トライターを知る

何の前触れもなく急に現れた4人目に呆気にとられていると、


「あぁ、いたんだー。それで、ヨミはどうしたの?」


「あのコはいつも同じでしょう?また研究室で何か作ってるんじゃない?」


【ヨミ】という人物の話をしつつ、1階に下りてくる。


「ちょっと登場が急すぎたよね。カッコよく出ていこうと思ったんだけど、

中々タイミングがつかめなかったなあ。」


「はあ…あんた、ファウナって言うのか。俺は誰でもいいから、さっきの質問の

答えを聞きたいんだが?」


「おっと、それもそうだったね。ごめんごめん。

まあ簡単に言うと、

私たちウルフが潰されちゃうかもしれないくらい強い人たちが

出てきちゃって、困ってるんだよね。」


「はあ?あんたたちみたいに強い連中でも、勝てないくらい

強いやつらがいるってことか?」


「そういうこと。彼女らは、【トライター《反逆者》】って名乗ってる。

そして、私たちウルフを潰すと宣言もしている。正直、

戦力差としてはそこまで圧倒的な強さってわけじゃないんだけど、5人の内の一人、

【カエデ】って言うリーダーみたいな人の固有能力が厄介みたいでね。」


【固有能力】とは、生まれたときに発現するかもしれない、特殊能力のことだ。

ウルフの中でも、ルーナとファウナしか持っていないらしい。


「厄介?」


「うん。死体を吸収して、急激にパワーアップする固有能力らしいの。この能力

のせいでみんな、戦うのを怖がっちゃってるんだ。もし自分が殺されて、

仲間を傷つけるための道具にされたらどうしようって。」


「い、いえ!怖がってなんかいません!ただ…」


「なるほどな。それであんなに侵入者を警戒してたわけか。」


「だね。さあ、そっちの質問には答えた。今度はこっちが聞く番だよ。」


「おう、なんでも聞いてくれ。知ってることはなんでも話すぞ。」


するとルーナが口を開く。


「ええと、質問というよりも提案なんだが、単刀直入に言う。

私たちウルフの、仲間になってくれないか?」


「――――――え?」


「も、もちろん無理強いはしないぞ!入り口でのことだって、

許してもらえているとは思っていない。

だが、君の戦いを一部始終見て思ったんだ。もしかしたら、

トライターを、カエデを倒せるかもしれない、と。」


俺は少し考え、答えを出した。


「もちろん、やらせてもらうぜ。ここにだって、俺が勝手に入っていったんだ。

それに、この力を誰かのために使うことができるとは、思ってなかったしな。

俺でよかったら、喜んでウルフの6人目になってやるよ。」


俺がそう答えると同時に、ルーナの顔がぱあ、と明るくなる。


「じゃ、これからはウルフの一員としてよろしくね、ユウジ君。」


「ああ、よろしくな。――って言ったはいいが、あと一人はどこにいんだ?」


そう呟いた瞬間、少し遠くから、歩いてくる音と共に、

また新しい声が聞こえてきた。

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ユウジは神に愛される ろいやるぷりん @shimunihe

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