草花と共に呼吸し、生きてゆく

 淡い色合いに心静まりつつも、その力強い生命力に時折はっとさせられるような、まさに草花そのもののような物語。

 人間から、七草の一つナズナを司る『ハヤリガミ』となった主人公が、ハヤリガミの守る里の人々や、逞しく活発なとあるまれびとと関わりながら、お話が紡がれてゆきます。

 作者様の植物やそこにまつわる文化についての造詣の深さが随所から感じられることもあいまって、読むうちに、自分が実際に里で暮らしているような、里の空気にゆっくりと馴染んでその一部となってゆくような、そんな感覚があります。
 ひとならざる世界に染められていく、とも言えますし、受け入れられていく、とも表現できるかもしれません。

 春なら芽吹の朝に、夏なら生命力溢れる昼に、秋なら実りと落日の夕べに、冬なら温もりを待ち静まり返る夜に。そっと、文字を追ってみてほしい作品です。

素敵な作品をありがとうございます!

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