第4話 アメリカの女 

 先週の金曜日はアメリカの独立記念日だった。昼間からポンポンと花火が上がり、花火は夜になるにつれてどんどんと激しくなる。私がアメリカに来て、もう、6回目の独立記念日か・・・。って!だいたい、私って何でアメリカに来たんだっけ??なーんて事を考えたくなくなるほど、私の心は5年間折れたままだ。

 5年前、1年間の語学学校を終え、私は演劇のワークショップとアルゼンチンタンゴのダンスクラスの申し込みに出かけた。そう!これがやりたかったのよ!私の心は小躍りどころか大躍り状態だった。が、「あれ?誰もいない。私、場所、間違えた?」これがコロナウィルスによるロックダウンの前日。そして、私の鬱々としたアメリカ生活のはじまりである。

 女は輝いていなければならない。他者からではなく、自分で自分のことを輝いていると感じているかどうかが重要だと思う。それと逞しさだ。ハエにまみれている肉を見ても躊躇なく、ハエを振り落とし、その肉を喰らうくらいでないといけない。それが私の持論だ。でも、今の私はどうだろう?私は、この異国の地でどうすれば良いのか、わからなくなってしまっていた。毎日、頭がうつらうつらとしている。何かしなければ。と、気持ちばかりが焦っているが、具体的に考えると何も出てこない。あまりにも辛いので病院に行くと、鬱病だった。

 こんな状態で何故私は、アメリカにとどまっているのか。その答えは簡単だ。私は遥々とアメリカまで来て、まだ何も得ていない。何もしていない。それでは女が廃るではないか。うつらうつらしている頭は辛いけど、そんなのどうにでもしろ!と、見えない敵に向かい、今夜もハエだらけの肉を喰らう。

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美魔女のつもり 志津 早織 @Sidu_Saori

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