極めてファンキーでハイテンションな厨二病転生コメディ作品
- ★★★ Excellent!!!
本作は、異世界転移というもはや「お約束」となったジャンルを、「取り残された側の視点」と「凄まじい密度の厨二病語彙(ごい)」で再構築した、極めてファンキーでハイテンションな厨二病転生コメディ作品です。
圧倒的な「厨二病」の解像度とスピード感、まず目を引くのは、主人公・高木たろすけのモノローグに溢れる「ルビの暴力」です。
「不運(カラミティ)」
「愛車(紅蓮の雷:ルビー・ローズ・ルナティック号)」
読者の脳内に直接語りかけてくるような、痛々しくも愛らしい「自称・闇の住人」の思考回路が、物語のテンポを加速させています。
「異世界帰り」のクラスメートというシュールな設定、夏休み明け、自分だけが厨二病だと思っていた教室が、「本当に異世界で神や勇者になって帰ってきた猛者たち」に占領されているという逆転現象が秀逸です。
感情が死んでいる(と言い張る)男子たち 、この「深淵と深淵がお見合いする」カオスな空間において、唯一の「一般人(自称・闇の戦士)」であるたろすけが、疎外感から涙を流し「トラックを買ってきて」と母親に懇願するシーンは、本作屈指の爆笑ポイントと言えるでしょう。
主人公・たろすけは、一見するとただの重度の厨二病患者ですが、その実、誰よりも「物語の主人公」になることを渇望し、努力(ポージングやセリフの練習)を惜しまない熱い男です。 崖から落ち、謎の洞窟でスライムに出会うラストシーンは、彼が待ち望んだ「運命(デスティニー)」がようやく動き出した予感を感じさせ、単なるギャグに留まらないワクワク感を提供しています。
「置いてけぼりの厨二病患者が、本物の異世界帰りに囲まれて覚醒する」というコンセプトは、既存の異世界ものに対するアンチテーゼでありながら、王道の成長物語も予感させます。 読み進めるうちに、たろすけの「痛い」言動が、なぜか「頑張れ!」という応援の気持ちに変わっていく不思議な魅力を持った面白い作品です。