いつも通りの朝。

こよい はるか @PLEC所属

いつも通りの朝。

空がどんよりと曇っている。

いつも通りの朝。


駅のホームから出て、一人で歩く。


いつも通りのはずだったのに。


ガタンッ


大きな音を立てて、僕が歩いていた隣の自転車が倒れた。

無風だったのに。人もいないのに。


僕は無視して歩いた。学校まであと百メートル。


少し歩いた先で、速度標識が倒れた。誰もいなかった。

根本からポキッと、まるで標識をそのまま倒したかのように。


歩いた。学校まであと八十メートル。


また歩いた先で、歩行者用信号機が落ちた。


歩いた。学校まであと五十メートル。


大木がすぐそこで倒れた。倒れたというより、大きな権力に潰されたよう。


——歩いた。学校まであと四十メートル。


目の前の一軒家が潰れた。いくらなんでも突拍子すぎだ。でも歩く。気にしてもしょうがない。あとちょっとなんだから。学校に着けば、何も無かったことになる。


学校まであと二十メートル。


「……っ⁉︎」


喉が押さえつけられた。地面に身体が押さえつけられる。動けない。


バタンッ


また誰かが倒れた。

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