「創作落語」と銘打たれてなかったら絶対古典落語と勘ちがいしたと思う。
それほどの完成度の高さで、時間に洗われないと得られないような余裕と風格も感じた。
冒頭熊がご隠居に羊羹を要求するくだりがまずおかしい。
さりげなく「虎屋」ということでリアリティも増す。
創作落語でこういう小道具はないがしろにされがちなので新鮮だった。
また熊に九官鳥の名前の由来を聞かれたご隠居が
「……今すぐかい?」
と答えるくだりもおもしろかった。
こういう奇妙な間とか、演じる落語家の姿が目に浮かぶような台詞回しは、よっぽど落語に親しんでいないと書けないと思う。
最後のオチも見事だった。
見事すぎてちょっと怖くなるほどだった。
剣の達人のとどめの一太刀を浴びた気分で
「参りました」
と素直に脱帽した。
カクヨムの作品を読んで、こういう気持ちになることはあんまりない。
カクヨムの創作落語中トップクラスの作品なのは間違いない。
すべての落語好き、また短編小説好きにおすすめしたい傑作です。
えっ、これ創作落語なんですかい?
あたしゃてっきり江戸の頃から脈々と語られる演目の一つかと思っちまいましたよ。
それだけ雰囲気ってぇものがしっかりしてんだねぇ。
そいでまぁ九官鳥ってぇ演目名だから、あたしゃてっきり九官鳥相手に漫才みたいに掛け合いをするものかと思ったらとんでもない、頭がよく回って話も達者なご隠居の語る、「九官鳥の名前の由来」って話でさぁ、あたしゃびっくりしちまったよ。
そしてオメェさん、落語ってのは気の利いたオチがあるから「落ちる話」、「落語」っていうわけだからね。
当然いいオチがあるわけだよ。
ただこれが実に頓智が効くというか、頭の良い人の上手い言葉遊びがなされてるってわけだ。
あたしゃ馬鹿だからどういう事かって一瞬じゃ理解できず、ちょいと考えちまったからまだまだだねぇ。
ともかく、難しい事は考えずに聞いてごらんなさい。
きっとオメェさんも気に入るはずだから。
落語に出て参ります登場人物といえば、
熊さんに、はっつぁんに、横丁のご隠居さん。馬鹿で与太郎、人がいいのが甚平さんと相場は決まっておるのですが、
だいたいがこのご隠居さんの元に熊さんあたりがやってきて、落語の始まりにございます。
最初こそ、名作『子褒め』のような出だしなのですが、そこに『九官鳥』なる厄介なものが入ってきて、
熊さんが、この鳥がなぜ九官鳥と呼ばれる鳥なのかをご隠居に聞く、というところからお話が始まってまいるのですが……
この先生は本当にわかってらっしゃる!!
落語の世界には、Googleも、Wikipediaも、ましてチャットGPTなんてものもござんせん。
じゃあ、どうやってものを調べるかってえと、
だいたいが皆さん、「ご隠居」さんに尋ねるわけなんですね。
落語において、このご隠居さんは人間知恵袋なのです。
逆を言うと! ご隠居さんは、どんな人からの質問にも『回答しなければならない』と言うのが宿命なのでござんす。
ここにまず、この落語の面白さがある。
サゲも見事にござんした。九官鳥はご隠居さんが言うには、あるとこに止まってたから十官鳥が九官鳥になっちゃったんだと言うところがサゲにございますが、
なんとなんと。そんなところに一晩止まってたらそりゃあ、九官鳥になっちゃいますなあ。
お見事! 名人上手と呼ばせていただきます!!
ご一読を!!
最後の最後まで楽しい気持ちにさせてくれる作品でした。
落語調で語られる本作。「九官鳥」とはなぜ「九」の「官」の鳥なのか、という逸話について語られて行くことになります。
実は、もともとの九官鳥は「十官鳥」というのだとか。そんなまことしやかなエピソードが語られて行きます。
そのエピソードも真に迫っていて、「実際にそんな話があったのか?」と途中でグーグルさんで検索してしまうほど。
軽快な語り口で語られて行くため、終始楽しい雰囲気で話が進み、最後の最後でも思わぬ言葉遊びが用意されていたり、ひたすらニコニコさせられる、とっても楽しい物語でした。