彼がいなければ、この国はもうなかった、と断言しておきながら、本編で描かれるのは不遇な帰還と閑職への着任という地味な日常。
この落差が絶妙で、読む者はずっと「この少年がどこへ向かうのか?」という緊張感を手放せない。
また、感情の扱い方が際立っている。
アルスは父王との再会でも感情を露わにせず、握りしめた手をそっと開くような描写で内面がにじむ。
言葉ではなく所作で語る書き方が徹底されていて、読んでいてひりひりする。
スリの男に追いついた後、言葉を失う場面も同様で、理解できなかった、とそのまま書くことで、アルスの世間知らずさと誠実さが同時に伝わってくる。
※76話読了までのレビューです。
本作の舞台はリンデル。
ファンタジーならではの架空の国で、王がいて、魔法があって――――待ってください。
この圧倒的なリアリティ。
上流階級の作法や習慣、軍の編成や指揮系統、息遣いまで聞こえる下層階級の生活描写などなど、圧巻の一言。
国を揺るがしそうな事件ひとつとっても、階級によって意見が異なるという社会の多層性は、並大抵の作品にはありません。
もう一度待ってください。
今から驚くべきことを言いますので。
なんと、この「作りこみの高さ」が、読み進めるときの抵抗にならないのです。
情報量が濃く、登場人物も多い。
なのに知識の洪水にならず、雰囲気づくりにだけ寄与している。
ええ、凄いです。
おそらく世界観の深さに勝るほど、各キャラクターの個性およびドラマ性があるからでしょう。
歴史系・戦記系のため、軽い話ではありません。
けれどスルスルと読めてしまう。
そして気づいた時には魅力にドップリと。
……まるで、アルスのようですね。
冷遇されている王子としか知らないうちは、せいぜい良く言っても腰の低いカタブツ。
しかしその心に触れたら最後、巻き込まれずにはいられません。
興味を持ったら開いてみてください。
損はしませんので。
物語の舞台は、中世の暗黒は脱しながらも、まだまだ不平等や社会的矛盾を多く抱え、更には帝国主義の兆しもちらほらと見え始めている、近代夜明け前のような世界。その独特の雰囲気が、魔法やモンスターが登場するファンタジーでありながら、大河ドラマのような歴史的風格を感じさせます。
そして、主人公は、いずれ『政変王』となることが明言されている、一人の王子。
その彼は、今、父王に冷遇され、積極的に命を狙われる訳ではないけれど、何かを期待されることもない、ぬるま湯であると同時に飼い殺しの生活を送っています。
自己肯定感は低いけれど、何もしない訳ではない。気質は真面目で善良、潜在能力はとても高い。何より、理不尽を理不尽と捉える真っ当な正義感と倫理観を持っている。
そんな彼が、いつ、どのようにして政変王として立ち上がるのか。
時代の闇が渦巻く中、迷いながら、悩みながら、自らの道を模索する、成長譚としても大河ドラマとしても読める物語だと思います。お好きな方は、是非。
ファンタジーなんですけど、人間ドラマが緻密で丁寧ですし、一つの国の文化や政治が基礎からしっかり固められています。
カクヨムのジャンルに大河ドラマがあったら間違いなくそこで人目に触れることでしょう。
改めてファンタジーというジャンルの裾野の広さに驚きました。
キャラクターの一人ひとりが葛藤し、自分の人生に立ち向かっているのも素晴らしいですし、それによる不条理がまた物語を彩っています。
一話一話が丁寧なので、読むのに少し時間が空いてしまっても読みやすいのも魅力です。
一気読みもしてみたいですが、時間が作りにくい人でも読みたいと思わせる作品。
ぜひこの機会に読んでみてください!!
王都の描写は、まるで昔のロンドンを思わせる臨場感に満ちています。
市場の活気や煙突掃除の少年たちに加え、輸出茶や船舶保険が物語に自然に組み込まれている点も見逃せません。都市の生活感だけでなく、世界経済の潮流までもが背景に漂う——そのリアリティが舞台をより確かなものにしています。
また作中で描かれる〈連棟式住居〉は、現在もロンドンに残る“ハモニカフラット”を思わせる構造で、当時の都市生活の空気感がリアルに伝わってきます。
この作品は、ただのファンタジーの街ではなく、現実に根ざした社会背景をもつ舞台として立ち上がるところに惹かれます。
19世紀イギリスの光と影をお好きな方にお勧めしたい一作です。
ファンタジー小説はヨーロッパ風の世界観が多いですが、この作品はヨーロッパはヨーロッパでも大陸ではなくイギリス風(それもビクトリア朝なのがユニークです)。
そんなユニークなファンタジー世界で、主人公であるアルス王子の奮闘劇が実に面白いのです。
その主人公アルス殿下は王子と言いながらも、過去のある出来事で不遇も不遇な扱いを受けています。
しかしアルス殿下はそんな境遇にも全く腐りませんし、人となりもひねた所がなく心優しいと素直に応援したくなるキャラクターです。
そんな彼も平和な世なら不遇な王族、あるいは軍人として過ごしたかもしれませんが、幸か不幸か彼は歴史の表舞台へと向かって行く事になっていく……と、歴史ドラマ好きならワクワクする展開がたまりません。
重厚だが読みやすい歴史ファンタジー物語、是非ご一読を!
主人公は王子に生まれついたのに、過去に起こった事故のせいで王族とは思えないような扱いを受けています。
けれど、だからこそ王子というよりは気質も軍人で、仲間想いの優しい少年です。
思い通りに行かないことも多く、そのたびにつまずき、悩んでいますが、持ち前の芯の強さで進んでいきます。
この作品は、いずれ何かを成し遂げる、そんな主人公の成長譚になります。
彼がどのように生きるのか、完結まで見届けたい物語です。
十九世紀英国をモデルにした世界観は、国の暗部もしっかり描かれていて、それも見どころのひとつかと。
それでいてファンタジー要素もしっかり絡んでいます。
こちらの作品をぜひお楽しみください!
本作の魅力は人間ドラマだと私は思いますが、重厚な世界観によりそれが引き立っています。
アルスは人をグイグイ引っ張っていくタイプではないですが、支えて応援したくなるような人物です。
少し一線を引いて物事を見ているようなところも、彼の境遇を考えれば当然で、それもまた少し切なくなる時があります。
私は第六近衛兵団編まで読み終えました。
ネタバレになるので詳しくは言えませんが、登場人物達は年齢や性格もさまざまで生き生きとしており、アルスが兵団に馴染んでいく様子は親心のような気持ちで見守っていました。
本格的な歴史ファンタジーを読みたい方におすすめです。
今後の展開も楽しみに読みたいと思います。
中世から近世に代わる時期にヨーロッパに、少々の魔術の要素が加わった世界。
そんな国の王子が、本作の主人公。
しかし王子と言っても煌びやかな宮廷に住む訳でもなく、ある事件によって父王に疎まれ、不遇の身となっています。
しかしそんな境遇にも腐ることなく、また突き抜けることもない彼に好感と、そして「殻を破れない」という共感を抱いてします。
つまり、魅力的なんですよ。
そんな彼ですが、ある事件を切っ掛けに変化が……。
不穏な世情を背景に、彼をとりまく世界がどう変わっていくのか、また彼が世界をどうかえていくのか。
== 2025/12/13追記 ===
渦巻く政情の中で生きる人々にもスポットが当たり、世界の厚みを感じます。
様々な階層の目線から、それぞれの立場や背景がどう収斂していくのか楽しみです。
最新話まで追いついたので書きます。
ストーリーはあらすじにお願いします。
なんと言ってもキャラの成長が本作の持ち味です。ここは外せません。
主人公アルスだけでなく、落ちこぼれと訳ありの集まり同然だった第6近衛兵団の面々が日常を過ごす中で変化していきます。
ときに新たな発見や危機。そして、別れ。
1つのシーンを読む事に彼らの伊吹を感じます。
もう1つは、その気高さですね。アルスを始め、曲がらない在り方はカッコよすぎます。
持つ者の義務。自分は古代ローマ史。特にハンニバルやカエサルの時代が好きなので、よりノブレス・オブリージュを体現して見せるアルスたちにはそのままに前へ進んで欲しいと思いながら読む手を進めてました。
軍隊物、男同士の友情。そして、己の運命に立ち向かう物語が好きな方には特にオススメです!!