7
王宮の広間に、再びメロスとセリヌンティウス、そして王ディオニス、さらにはセリヌンティウスの母親までもが集結していた。
全員が何かしらの問題を抱え、迷走していたが、今ここでついにひとつの結論に達しようとしていた。
「メロス、お前、何度も言ってるけど、結局信じる心ってなんなんだよ?」
王ディオニスは肩をすくめながら言った。
「うーん、信じる心…それは、やっぱり他人を信じることなんだろうな、と思ってた。でも、実際にやってみると、すぐに裏切られるんだ。」
メロスは少し肩を落として、深いため息をついた。
「俺が言いたいのはな、信じる心なんて、最初からあるものじゃないんだよ。ただ、時間がかかるだけなんだ。」
セリヌンティウスは冷静に言った。彼の目の奥には、どこか諦めに似た光が宿っていた。
「時間か…?」
メロスは首をかしげた。「俺が信じる心を示すためにやったことって、結局カオスばっかりだった気がするんだけど」
その時、セリヌンティウスの母親が無言で立ち上がり、メロスに向かって言った。
「お前、信じる心が何だか分かってないだろう?」
「母さん、ちょっと静かにしてよ…」
セリヌンティウスは顔を赤くして言った。
「いや、いいんだよ。」
メロスは少し真面目な顔をして、母親を見つめた。「どうしても、分からないんだ。信じるって、どういうことなんだ?」
母親はしばらく黙った後、ゆっくりと答えた。
「信じる心ってのは、相手を信じるんじゃなくて、結局、自分を信じることなんだよ。」
その言葉を聞いたメロスは、目を見開いた。「自分を信じる…?」
「そう。」
母親は微笑んだ。「他人を信じることも大切だが、まずは自分が信じられなければ、どんな人間関係も成り立たない。それが信じる心だ」
一瞬、メロスの中で何かが弾けた。
「それって、俺が自分を信じるってことなのか…?」
「そうよ。」
母親は優しく頷いた。「他人を信じるには、まず自分を信じて、責任を持つこと。それが本当の信じる心よ。」
その言葉に、メロスはゆっくりと胸の中に響く感覚を覚えた。
「なるほど…つまり、俺は自分の考えと行動に責任を持って、それを貫けば、それが信じる心に繋がるってことか」
「その通り。」
セリヌンティウスは無表情で言った。「信じる心ってのは、結局は自己責任だ。それができなければ、他人を信じる資格なんてないんだよ」
「でも、俺は…」
メロスはふと立ち上がり、王ディオニスを見た。「王よ、俺はまだお前を信じられるかわからないが…でも、自分を信じる力を持って、前に進むべきだと思う」
王は静かにメロスを見つめた。そして、ゆっくりと笑みを浮かべて言った。
「そうか…なら、お前はもう立派に信じる心を持っているのかもしれないな」
その瞬間、メロスは何かが解けたように感じた。信じる心とは、他人を信じることではなく、まず自分を信じることだ。そして、それができれば、他人との関係も変わり、すべてが前向きに進むのだ。
その時、王が突然立ち上がり、全員に向かって叫んだ。
「よし、みんな!今日から信じる心を持って、無駄にひもで絡まないようにしよう!」
セリヌンティウスとメロスは顔を見合わせて思わず吹き出した。
「それで、どうするんだ?」とセリヌンティウスが笑いながら聞く。
「どうするって、もう俺たちは信じる心を持ったんだろ?これからはひもじゃなくて、みんなの信頼で解決するんだよ!」
メロスは明るく言った。
王は少し照れながら言った。「まあ、ひもを使ってこんなにカオスになったのもいい思い出だろう…」
その後、王宮は驚くべき平和を取り戻し、セリヌンティウスも少しだけ人を信じることを学び、メロスも自分を信じる力を持って進むことができた。そして、誰もが互いを少しずつ信じ、認め合うようになった。
そして、カオスの中から奇跡的に生まれた「信じる心」は、王国に静かな平和をもたらした──。
走るなメロス tanahiro2010@猫 @tanahiro2010
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