出られない個室
まさつき
誰か助けて
すいません、困ってるんです。
誰でもいいから、助けてほしい。
よくある話かもですが、この個室から出られなくて。
え? どこの個室かですって?
やだ……そんな恥ずかしいこと、書けるわけないじゃないですか。
あなた、ノンデリ?
仕方ないなあ。
いいですよ、答えますよ。
え? 困ってるのにエラそうですって?
仕方ないじゃないですか。とっても、恥ずかしいんですから。
いいですか、書きますよ……えと、お花摘みするところ……みたいな?
――きゃっ。
それで、とにかく、出られないんです。
アレがなくて。アレも使えないし……。
カミさま的な感じの、アレ。薄くて儚げなアレです。
立ってするなら、フリフリしておしまいなんですけど。
座るの必須なほうでしたから……。
ん? なんだ男かよって、あなた思いましたね? ひどい……。
丁寧な言葉で書いているからって、勝手に決めつけちゃわないでください。
これでも心は、乙女なんですから。
男なら、思い切ってパンツはけって思ったでしょ。
ああ、それならもう、済ませました。
出られないっていうのは、紙がないとかじゃないんです。
本当に、出られないんです。
入ってきたところ、開かなくて。
無いのはアレなんですよ。
ここ、鍵が無いんです。取手も無いんです。
手をかけるところが、ない。
外からは、押したら開いたんです。
中からは、引かなくちゃいけない。
でも、つまむところがなくて……。
どうです? だいぶ深刻でしょう。
それで今あなた、上から抜ければいいんじゃね? とか、思いましたよね?
私も思いました。
無理なんです。
届かないんです。
扉と薄壁の上、天井までの隙間、無いんです。
ここね、井戸の底みたいなんですよ。
井戸の底らしいという意味じゃないですよ。比喩です、比喩。
まるで井戸の底にいるみたいに、見えなくなるまでずーっと、壁なんです。
困った……誰も助けてくれない。
ひたすらSNSとか某掲示板とかに書き込んでますけど。
誰も相手をしてくれない。
いろんな人がいっせいに、〇〇したらいいよとか、□□するのだとか教えてくれるのが定番なのでは?
はっ! これはもしや、×××しないと出られない系のネタなのでは??
きっと、この部屋のどこかに、ヒント、メモ書き、指令……なんかそんなのがあるはず……て、あった! ありました。
どうして気がつかなかったんだろう。
足元、私が踏んずけていた床、靴をどかしたら、書いてありました。
「1000文字書くと出られる個室」
あ、出られそう。
出られない個室 まさつき @masatsuki
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