概要
そのために、副作用は承知の上で、きついドーピングに手を染め、日本トップクラスの小田島昇(しょう)選手をトレーナーに頼み、秋までの半年間、自分を厳しく追い込んでいきます。
その過程で、深刻な副作用が顕在化し、徐々に彼の身体も精神も蝕まれていきますが、彼の心は屈することはありません。何が彼をそこまで駆り立てるのか、ビルダーにとって筋肉とは何なのか、その心の深淵を覗き見る小説です。
彼は果たして、オリンピア・ジャパンを獲り、プロカードを手にできるでしょうか。そしてその先に何が見えるのでしょうか。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!筋肉に取り憑かれた『篠崎』―― 狂気を描く『小田島』に魅せられる読者。
この「ひとこと紹介」が、すべてを物語っていると思います。
まず最初に申し上げると、私はボディービルダーの世界にはまったく興味がありません。
当然ながら、作中に登場する専門用語や、『篠崎』という人物の行動の多くに、理解が追いつかない場面もありました。
それでも――
いや、それだからこそ、かもしれません。
ページをめくる手が止まらず、一気に読了してしまいました。
気がつけば、自分も“何か”に取り込まれていたような、不思議な読書体験でした。
主人公が作者と同じ『小田島』という名前なのも、どこかメタ的で印象に残ります。
そして迎えるラスト――予感はしていましたが、それでも圧倒されました。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!圧巻で壮絶な1人の男の戦い
筋肉隆々の方って憧れます。きっと相当な努力をしているんだと、わかっていたつもりでした。ですが実際にこちらを読んで驚きの連続。
主人公、篠崎さんは最初から予想を超えた方法でバルク(筋肉)をためていき、本番までの間に「え?」と思うような方法で身体を仕上げていきます。
タイトルにある通り薬物で強化を試みますが、何が彼をそこまで後押しし、追い込むのか。
ただ一つの栄光のためだけに、と思うかもしれませんが、彼にとってはそれが人生の全てなのでしょう。どんなことがあってもストイックにボディラインを維持していくその姿勢は圧巻であり壮絶でもあります。
この作品を読めばボディビル競技の厳しさ、上を目指し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!理想の身体への道
紀元前5世紀ごろ、古代ギリシアの彫刻家ポリュクレイトスは男性像の理想を数字を用い細かく定め、我々の知るような多くの古代ギリシア~ヘレニズムにおける男性像に影響を与えたとされている。
このように、人間は古くから「美しい身体」を目指してきたのである。
この話はまさに、自分の思う理想の美しい体を手に入れるため、ボディビルに励んだ男の物語である。主に作品内ではトレーニングよりも薬とその影響を頭に入れながら体を作りこんでいく様子が緻密に描写され、身体改造の過酷さを暗に示してくれている。
また、ボディビル素人にも分かりやすく解説されており、イメージもしやすく感じられた。知識のある方や、薬に詳しい方…続きを読む - ★★★ Excellent!!!完璧な肉体を求めた、狂気の男の記録!!!
プロのボディビルダーになるため、オリンピア・ジャパンという大会で優勝を目指す篠崎誠司の、壮絶なる狂気の記録!
ボディビルという世界をまったく知らずに読み始めたのですが、先ず気付かされたことは、この業界の面白さでした。
「美しい肉体」を創り上げるために、トレーナーと二人三脚となって過酷なトレーニングメニュー、食事制限をこなしていく……スポーツとアートが一体となったような競技だということに、本作を通して実感しました。
そして、最高の筋肉を創造するために篠崎が取った方法は、薬物摂取でした。
この薬物による肉体的な変化や精神的に傾いていく描写が物凄く、彼はどうなってしまうのか気にかかり、読みだし…続きを読む - ★★★ Excellent!!!えっ、異世界の話では?――いいえ、現実にありうる話。
トレーナーの小田島とボディビルダーの篠崎が、二人三脚で日本ボディビル界の頂点を目指す物語。本作は、頂点を目指す過程で避けて通れないこととして薬物使用の問題が描かれており、冒頭から衝撃を受けました。
しかし、本作の主題は、薬物使用によって肉体と精神を極限まで追い込むことで生じる狂気にあります。篠崎は異常な行動に自覚がありながらも、完全に抑えることができません。小田島はそんな彼を強く支えますが、破滅に向かう篠崎を決定的に止めるわけではありません。一つの目標に向かううちに、何が普通で何が異常か、判断が曖昧になっていく――そんな伝播する狂気の表現も本作の魅力かと思います。
そして、迎える最終話の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!男は栄光を目指して破滅への道を突き進む
ボディビルに命を懸ける篠崎誠司を主人公にした本作品。ボディビルと言えばたくましい肉体! その肉体を作るのに決して欠かせないのは激しい筋トレ!……と言いたいところだが本作ではそうした筋トレの描写はほとんど出てこない。代わりに出てくるのが壮絶なまでの薬物描写!
筋肉を発達させるためのステロイドはもちろん、不要な脂肪を落とすための減量にも薬物を利用するし、筋肉のキレを良く見せるために薬物を使って体から水分を絞り出す。当然健康に良いはずもなく、たくましく肥大する筋肉とは裏腹にどんどん篠崎の精神は不安定になり、健康診断の数値も急激に悪化……。情緒不安定になり、周囲に当たり散らしながらも、筋肉に憑…続きを読む