優しさと美味しさのある場所へようこそ

異世界で飯関連のお話となると、やたらと「飯が美味い」ばかりが先行して変な持ち上げられ方をする、一種の「日本の飯スゲー無双」になりがちなジャンルなのですが、本作では舞台となる喫茶店を中心に、訪れるお客さんとの交流を中心としたストーリー展開がなされているのがポイントです。
料理は勿論この作品において欠かせない要素なのですが、あくまで舞台は喫茶店であり、その場所が主役、という立ち位置なのですね。
その上で、お客さんが悩みを話したり、心の内を明かしたりして、一つの答えを見つけ前に進んでいく、という、実に優しいヒューマンドラマが繰り広げられます。
なので、お客さんが「ただ飯に驚いて美味い美味いと叫ぶだけのバカ」っぽく映らなくて、実に「個」として立っている、と感じられます。
そして勿論、魅惑の美味しいグルメも実に豊かでそそられます。
その見た目、香り、食感、風味など、実に表現豊かに語られ、目が文字を読んでいるはずなのに料理の像を幻視してしまいます。
実に飯テロ……腹が減る……。
読んでいてとても満たされる作品ですので、ぜひともお目通しいただきたい作品です。

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