誰だって心から笑える場所が必要
- ★★★ Excellent!!!
主人公の七海の母親としての責任感や覚悟、葛藤が丁寧に綴られています。
彼女は夫の春樹に心無い言葉を投げかけられますが、この夫も悪気がないのでしょう。ですがそれが一番厄介で、価値観の違いといいますか、良かれと思って言葉のナイフを向けるからこそ、夫婦はすれ違ったままになってしまいます。
子ども達が可愛くて成長するにつれ、七海を支えてくれるのが微笑ましいです。が、まだパパが恋しい年齢。子ども達のことを考えるからこそ「母親なんだから」と強く思って自分を縛り付けてしまう七海。その過程がリアルで、単身赴任した夫から何気なく言われた言葉にも傷ついてしまいます。このことから、パートナーから言われ続けてきたことは心の奥に深く刻み込まれるものだなと感じました。
七海の一筋の光となった恭吾との出会い。恭吾は彼女の傷を癒してくれる存在です。温かくて思いやりのある人。誰しも人を好きになれば、相手が苦しんでいるなら助けたいと思うでしょう。その純粋な気持ちが恋心となり2人が惹かれていくシーンに、例えそれがイケナイ関係であってもほっとしてしまいます。七海が一人の人間としての自分を取り戻せるような希望があるからだと思います。
夫婦関係だけでなく家族関係、人間関係で苦しい思いをすることは多くありますが、それを救ってくれるのも同じ人間であったりします。
一人で抱え込まずに誰かに助けを求めることって大事ですね。誰だって心から笑える日常が欲しい。最後はそういった気持ちに気づく七海と恭吾です。