金銭的な贅沢はないものの、穏やかな日常を送る少女と青年。
しかし、それは仮初の日々だった……。
前半の緩やかな日常からの転変。
そこからはジェットコースターのような展開。
主人公の少女が良い意味で「普通の」感覚なだけに、よりその背景の特異さが際立ちます。
そして最後の決断。それは彼女が普通の幸せを何より大切にしてからかだと思う、納得の選択でした。
物語も面白いのですが、どちらかというと難読な言葉もありながら、章の区切りや前後の構成が整っていて読みやすくなっています。
話自体の面白さに加え、そういった書き手としても参考になる作品でした。
物語のジャンルとしては現代ファンタジーですが、因習や伝承というホラーオカルトを持っています。
主人公は、民俗学者の真尋とその妹、雛姫。
真尋は雛姫を一人で守って育ててきたわけですが、そんな影のある男性が好きな方。刺さりますよ。
雛姫は素直だけど健気で勇敢。小学生にも関わらず大好きな兄を助けようと奔走します。
二人には得体の知れない島の風習や一族、果てには、鎮められた神……大きな障害が立ちはだかります。
先の展開が気になって気になってたまらない、濃厚で信頼感のおける物語。薄味の流行りものに飽きてしまった方にもお勧めできる一作です。
「耽読」という言葉がこれほど相応しい小説があるだろうか。
2016年、私がWEBで読んだ初めての長編小説がこれ。
12万文字のデジタル――当時の私にとってはハードルがあまりに高かった。だが手に取ってみれば最後、紙の本ではないことなどすっかり忘れて、気づけば一晩で読了していた。
カクヨムではまだ連載が始まったばかりだが、ぜひ続きを楽しみにしてほしい。
どこまでも物語を堪能できる。
最後まで見届けたその瞬間には、これが実存の神話・伝承の物語だと信じられるはずだ。
荒ぶる神の描写、雛姫のいじらしさとヒロ兄の想い。登場人物の心・背景の書き分けが本当に見事で、すべての人物を愛してしまう。そして泣いた。終わりも大満足。じっくり読ませる。とにかく読ませる。その構成の凄さ・素晴らしい物語に感謝。
ぜひ皆様にもご堪能いただきたい。