血と愛の繋がり。断ち切られるもの。断ち切られないもの。

 個人的な感想で失礼します。
 どんな言葉を使えば、感じたことを正しく伝えられるのか。自分のことなのに全然わからなくて、途方に暮れているのですが、上手く言えないなりに書かせていただきます。お許しください。

 読み始めてまず、生きている、と感じました。描かれている世界や登場人物が「小説のためにつくられたもの」ではなくて、そこに生きた世界があって、生きている人間がいる。そんなふうに感じたのです。
 自分はただただ、その世界の空気を吸い、運命と対峙する人々を見つめていたように思います。
 そこに自分の気持ちを挟むことも確かにあったはずなのですが、先述のとおり、作り物と認識していないため、そこに「設定」や「展開」というものは存在するけど存在していなくて、そういったものに巧みさを感じたり引き込まれたりしていたのにそのことに無自覚に、ただグイグイと読み進めていました。人の人生に予め作られた展開がないのと同じで、私の目の前で今、進行していく雛姫や真尋たちの行く末を息を詰めて見守っていました。
 そんな中でも突き抜けてくるものが、情景描写と感情の発露でした。前者はパッと目の前に風景が広がりとても美しく、後者はその強さに胸がギュッとしました。自分は俯瞰するような読み方をしていたのかなと思いますが、そうやって作中の人物たちと同じ場所に立てる時もしっかりとありました。
 また、私は家系図を思い浮かべるのが苦手、というか出来ないので、読みながらちょこちょことメモをとっていました。その時、受け継いだものを記号で分けて、人名の横に記していたのですが、ふとメンデルの法則を思い出しました。そして品種改良を思い浮かべて、嫌だなぁ……と思いました。その時、雛姫たちの気持ちを頭だけでなく、ほんの少しでも実感を伴って心で理解することができた気がしました。

「つくられたもの」として感想を書けば、もっとわかりやすく気持ちをお伝えすることができたのだろうとは思うのですが、どうにも私はこの作品に対して「ここの展開が」「キャラが」等の書き方をしたくないみたいです。
 取り留めもなく失礼いたしました。
 ここに書いた他にも好きだと感じた色々が私の胸にあります。

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