事故物件サイト
秋冬
事故物件サイト
私は地方都市X市で一人暮らししている、しがないOLだ。
住んでいるのは築30年のボロいアパート。女ひとりで住むには少し怖いが、私の収入ではこれが限界だ。
晩秋のある夜、何気なくネットを見ていたら
事故物件サイト大○てる
というサイトが存在していることを知った。
元々怖がりなんだからやめておけばいいのに、怖いもの見たさに負けて、スマホをタップしてしまった。
日本全国の地図上に、事故物件の情報が掲載されているシンプルなサイトだった。
事故物件がある場所は、炎のマークが表情されている。
東京や大阪など都市部には特に炎マークが密集していた。
人口が多いのだから、当たり前だ。
私はふと、思った。
自分の住んでいる場所はどうなのだろう?
検索窓に自宅の住所を入力してタップすると、なんと炎マークが表示されているではないか。
このアパートを契約する時に不動産屋は何も言っていなかったのに。騙されたのだろうか。
それとも私が入居してから知らない内に亡くなった人がいたのだろうか。
炎マークをタップすると、住人が死亡した日時と詳細が表示された。
「あれ……この日付って……」
そこに映ったのは、過去でも未来でもなく、今日の日付。
そして、時刻は……
「えっ……今から5分後?」
日時の方が気になって先に確認してしまったが、その直後に部屋番号を見て愕然とした。
私の部屋の番号だったのだ。
「住人が風呂で溺死……?」
どういうことだろう?
誰かがいたずらで書いたのか、記入ミスなのか、それとも……。
しんと静まり返った夜の部屋で、私はぶるっと震えた。
かなり不気味だし、怖い。
……でも、一刻も早く「なーんだ」と安心して笑いたい。
そんな感情に突き動かされた足が震えながらも勝手に歩き出し、風呂場へと私を向かわせた。
真っ暗な風呂場からは、人の気配は感じられない。
しん、と静かないつもの浴室。
だが私はいつもとは確実に異なる点に気付き、戦慄した。
生あたたかい湯気が立ち込めているのを、顔の肌と鼻の粘膜で感じたからだ。
パチンと壁のスイッチを押して浴室の電気を付けると、誰もいないはずの浴槽からお湯が溢れていた。
一体誰が……?
私が固まっていると、背後から
「あーーーーーーーーーーーーーーーー」
と、低音の欠伸のような声が聞こえてきた。
振り返ろうとした瞬間、ものすごい力で首の後ろを掴まれ、
お湯の中に顔を沈められた。
恐怖と苦しさでパニックになっている中で、私は必死に天国の祖母の事を思い出していた。
(お婆ちゃん助けて……!)
心の中で祖母に助けを求めた瞬間、後頭部から首にかけての手の感触が無くなった。
私は5分程むせながら浴室で放心していたが、すぐに110番に通報した。
警察はすぐに駆けつけて話を真剣に聞いてくれたけれど、入念に調べても私以外の人間がいた形跡は一切残っていなかったそうだ。
翌朝、大○てるでもう一度自宅を確認してみた。
昨晩見たはずの炎マークは消えていた。
お婆ちゃんが助けてくれたんだろうか?
事故物件サイト 秋冬 @haruakifuyu
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