何かを見た……それを霊と呼んでいいのか、分からないけれど

 あれは、僕がまだ中学か高校生だった頃。
 夏休みになると決まって、お昼のテレビ番組で心霊体験の再現ドラマの特集が放映されたものでした。
 告白調の語り、今では古い物語の中でしか姿を見なくなった、4:3のアナログテレビの画面、ぼんやりとした画質、ちょっとつたない名も知れぬ俳優たちの芝居。
 過度に脅かすような演出のない、淡々とした体験の積み重ね。
 そこへ、ふいに差し込まれる、静かな恐怖。
 霊だったのか、錯覚なのか、錯覚だと信じたい――。
 けれどたしかに感じた、誰かの恐怖が語られる。

 そんな匂いのする、物語でした。

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