物語の詳細については、他の方も存分にレビューされておりますので、そちらをご覧いただくとして。
僕的にはこのお話のポイントは「焼き鳥とホットドッグ」にあると思うんですよね。
これまでの知識をもとに、異世界でも似た食材を使ってこれらを作る。すると、作ったことがきっかけとなって話が一気に進んでいきます。
ただですね、一つだけ残念なのは「醤油」がないこと。
焼き鳥はタレでしょ。
読んでいくと、そんなツッコミも頭に浮かびます。
ところが、さすが七月さん。
そこも、抜かりありません。最後まで読めば、あらびっくり。
あなたも「星と丸」のとりこになること、間違いなし!
未知流と慶太は三十五歳の幼馴染。
同窓会で二年ぶりに会った二人は、互いのことを思いつつ眠りにつく。そして目を覚ましてみると、いつの間にか異世界に!
未知流は寝巻のジャージ姿、そしてなぜか慶太は高校二年の頃の姿だった!
ふたりは異世界を歩き回り、教会を発見。
星と丸の模様が入ったシンボルを飾り、「アーマ神」という神を讃える一風変わった信仰をしていたが、二人は泊めてもらい、さらには仕事と食事も世話してもらえることになった。
そんなある日、一人の少年とぶつかってしまう。
少年はみすぼらしい格好で足に怪我を負っていたが、未知流たちの保護、そして慶太の「マジック」により心を開いてくれた。
少年の話では、この世界には「魔法使い」が存在し、彼らは「悪魔」であるとして排斥の対象、あるいは奴隷として虐げられているのだった……。
本作は、異世界で自らの居場所をつくり、仲間と生活をともにしながら、様々な問題を解決していくという展開の物語です。
そして、この問題解決の方法がすごく面白いです!
武器をしようすることも禁止されている魔法をむやみに使うこともなく、ミステリー好きの未知流のアイデアと、慶太の営業マンを感じさせる大人な対応で見事に解決していく様は、読んでいて親近感を抱くとともに、とても勇気づけられました!
さらには、いかにして二人は異世界に飛ばされたのか、教会のシンボルは?そして、この世界は何なのか?大いなる謎が明かされたとき、驚きを隠せません!
幼馴染な二人の関係もどうなるか……必見です!
ぜひともお読みいただきたく存じます!!!
ここまで静かな異世界転移ものというのも、ちょっと珍しいなと思う。
スローライフを謳う異世界物語は多くありますが。
冒頭まもなく大きな事件に巻き込まれてスローライフどころではなくなったり。スローライフを守ろうとしながらも、賦与されてしまったチート能力により波乱万丈の物語になることがしばしばです。
しかし、「星と丸」の物語においては、主人公の男女ふたりはチート能力など持ち合わせない、本当にただの市井の人。そんな二人が、出でた先の人々に優しく迎え入れられ、優しく接して暮らしていく。穏やかな日々のうちに社会背景に根ざした不穏な出来事に対峙しながらも、良き人々に助けられ、悪を退け、世界を少しずつ、やがて大きくより良い方向に動かす原動力になる――そして解き明かされる世界の秘密。
そうした出来事が、普通の人々の普通の眼の高さで終始物語られるというところに、僕はとても惹かれました。
異世界ファンタジーと聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか。派手な戦闘? 強大な魔法? それとも異種族との冒険譚? 本作が描くのは、そうした表層的な刺激とは異なる、もっと深く、もっと静かで、それでいて強烈な世界そのものの肌触りです。
この物語で特筆すべきは、異世界の機微──人々の営みや価値観、土地に根ざした文化や思想が、旅人がゆっくりと街角を歩くような筆致で描かれていること。住人たちはどのような日々を送り、何を信じ、何に笑い、何に怯えているのか。異邦人である私(読者)に、まさしく「異文化に触れる体験」を丁寧に提供してくれます。主人公二人での視点もその体験に厚みを持たせ、ぐいぐいと物語の中へと引き込んでいきます。
そのうえで展開されるのが、「なぜ魔法使いたちは迫害されているのか」という根源的な謎。この問いは、作品自体を支える構造であり、読者を少しずつ深みへと引き込んでいく鍵でもあります。
終盤、タイトルである「星と丸の王国」が意味を帯び始めたとき、世界が反転します。なぜこの名称だったのか? 魔法使いへの迫害は何に起因していたのか?
真相を知った時、私は思わず「ああ、そういうことだったのか」と声を漏らしてしまいました。(厳密には「ああ」だけ声を漏らし、「そういうことだったのか」は心の中で)
幻想に満ちた情緒と、ミステリーとしての快感。その両輪が静かに、けれどがっちりと、私の心を掴みました。
再読ですが、面白かったです。
この度は素敵な物語をありがとうございました。
未読の方は是非。
誰と行くかって、本当に大切。
海外の街や、異世界の未知の国であっても。
ああ、あの人と行きたいな。
そんな風に思える人、実はあまり居ないのではないでしょうか。
長い年月を振り返って、あの人と・・・。
あの人となら、やって行ける。
こちらは、そんな信頼で裏打ちされた愛情の物語でもあると思います。
異世界に無い道具や能力で無双するのでは無く、地に足をつけた方法で、謎を解き、切り拓いて、まわりの人々を幸せにしようと奮闘する。
日常にとても近い非日常。
何せ、皆を幸せにしたいと、願うのはお醤油!笑
(これは是非お読みになって確認くださいね)
とてもステキな物語です。
ぜひご一読ください。
異世界にきてしまったふたりの男女
魔法使いの子供と知り合い、現地の子供が学べる算数を教える学校を開きます
海外少年協力隊のように、現地の人たちにボランティアで勉強を教えるのって珍しいと私は思いました
そして、魔法使いが迫害されている事情、貴族が禁止された奴隷を使っている社会問題に直面します
主人公二人は、現代の知識や、社会人経験があるだけで特別な力を持っていません
しかし、現地の人々と協力して困難を乗り越えていきます
そして、この世界がなんなのか、魔法使いとそうでない人がなぜいるのか、物語の終盤で明かされた時にきっと驚かれると思います。
SF的にも面白い話なので、まだ、未読の方は一読をしてみることをお勧めします
とても丁寧に描かれた作品です。
この作品の個性として一番に挙げられるのは、なんといっても、「異世界の内情や情緒」というものを、じっくりと手探りするように味わわせてくれることです。
そこの世界に住む人々は、現実世界の人間とはどう違うのか。普段はどんな生活をし、どんなことを考えて生きているのか。そういう「文化の違い」みたいなものにしっかりとフォーカスを当て、一種の異文化交流をしているような感じを引き出してくれます。その中で更に「魔法使いがなぜか迫害されている」という謎を追う展開となります。
せっかく異世界に来たのだから、ファンタジーなのだから、その世界の空気とか内情なんかをもっとしっかり味わいたい。昨今の「ファンタジー」の中では忘れられがちなそのポイントを思い出させてくれるのが、この作品の第一の魅力だと思います。
……と、いうように情緒満載で紡がれるこの物語ですが、もちろん魅力はそれでは終わりません。
そう、ミステリーとしての真相部分。そこのインパクトが凄いのです。
終盤、『星と丸の王国』というこのタイトルの『意味』に触れて行くことになります。
その段階から怒涛の伏線回収が始まり、「なん、だと……?」と読む人を驚愕させる真相が待っています。
「魔法使いが迫害される意味」と、そもそも、この『異世界』とはなんだったのか。(特に『星』と『丸』の文字がどこから由来するものだったのか、という答えが面白すぎます)
それらがある一つのイメージに集約されていく。ついニヤリとするような感じもあり、ここまで読み続けて良かったと、必ず思わされること請け合いです。
情緒あるファンタジー、そしてラストでの驚きを味わってみたい方、是非とも本作を手に取ってみてください。
ミチルとケイタ。
幼馴染の三十五歳、ともに独身。
二人が転移した異世界は、地球にも似た世界。
最先端のテクノロジーがないかわり、魔法が――――あるものの、大っぴらにはできません。
便利なのに、どうして?
これが本作最大のテーマとなっております。
特筆すべきは設定の上手さ。
異世界なのに言葉が通じるなど、転移系のお話にはお約束といっていい事項がありますよね。
それらをご都合主義にせず、ちゃんとストーリーに落とし込んでいる形は、よくある〇〇モノとは一線を画します。
こういう必然性のある構成、好きです。
しっかり練られているのは設定だけでなく、随所に張られた伏線も。
あらすじにもある通り、後半に一気に集約していきます。
なんで知ってるかって?
そりゃあ、私も転生者だからですよ。
……冗談はともかく、クライマックスには期待あれ。
捻りのある展開が待っていることでしょう。