【童話】どんぐり
とろり。
1話完結 地上での一日
ころころ
ひとつの どんぐり が おちました
かれは の まじる つちのうえ
くっしょん のように どんぐり を むかえました
つちのうえには むし や しょうどうぶつ がいました
そして
そのみ を ふしぎそうに みつめています
なまえは 〝どんぐり〟
どこかのがくしゃ が つけたって いわれています
〝どんぐり〟は きように
おじぎをしながら、じこしょうかいをしました
たべものを すに はこぶ アリさんは いいました
「しんじん かい?」
〝どんぐり〟は すこし きんちょう した おももちで 「はい」 と こたえました
とおりすがり の ねこ はいいました
「おいしそう だね」
〝どんぐり〟は あわてました
いっぽ さがるように ねこから すこし はなれます
ねこは しっぽを ふると にゃ~ となきました
大きなねこ に こわがっていると ドンたろう という どんぐり仲間が やって きました
ふとっちょの どんぐり です
「やい あんまり いじめるな」
ドンたろうは おなかの あたりを ぽんっと いばって いいました
ねこは しっぽを さげると そっぽをむいて どこかへ行って しまいました
アリさんも しごとを おもいだして かえっていきました
ドンたろうは 〝どんぐり〟のほうを 見ると ふさのようなぼうしに ぽんぽんと じぶんの ぼうしで こづきました
大きなねこが いなくなると
〝どんぐり〟は あんしん しました
「ありがとう」
「なーに これくらい」
「ところで」 と ドンたろうは 〝どんぐり〟に はなし かけました
「なあに?」
〝どんぐり〟は なんだろう と 気になり ききかえしました
「なまえは?」
「ぼく 〝どんぐり〟 よろしく」
「どんぐり?」
「そう」
「それじゃ 他のどんぐりたちと くべつ できない」
「え?」
「おれさまが いいなまえを つけてやろう」
ドンたろうは にやにや しながら 〝どんぐり〟 のあたまを コツンと つつきました
「くりぼう」
「へ?」
「どうだ? ぴったりだろ?」
〝どんぐり〟は すこし いやだったけれど ふとっちょの ドンたろうの いうとおりに しました
そして ドンたろうは くりぼうと きのした で ふたりきりに なりました
えだは から さしこむ ひかりが ちょっぴり まぶしくて くりぼうは ふさのようなぼうしを さげました
「こねぇな」
ドンたろうは だれかを まっているようでした
「だれか まっているの?」
「ああ、きんじょの いぬの ポチだよ」
「へぇー こわくない?」
「あったぼうよ」
ふたりで はなして いると すずのね が きこえました
「お、きたかな」
ドンたろうは キョロキョロ しはじめました
ドンたろうが 「あ、」と いうと むこうのほうから いっぴきの こいぬが やってきました
「やあ」
ポチは きさくに ドンたろうに あいさつを しました
「ごくろうだな」
「そちらこそ」
あいさつが おわると ポチは くりぼうの ほうを みました
「しんじん さん?」
「はい」
ポチは くりぼうに おじぎをしました
「はじめまして」
「こちらこそ はじめまして」
おたがいに かんたんな じこしょうかい をしました
「なーんだ うまれた ばっかりだね」
ポチは また きさくに いいました
ポチは ドンたろうを きように あたまのうえに のせました
「え?」
くりぼうは おどろきました
「くりぼう! はやくはやく!」
くりぼうは すこし ためらいました
なぜなら まちがって おっこちないか ふあんに なったからです
「ど、どうしよう」
くりぼうが ためらっていると
ポチは くりぼうを ひょいっと あたまのうえに のせてしまいました
「よっ! できたじゃねぇか」
ポチは はしりだしました
「しっかり つかまってえな」
「う、うん!」
すこし らんぼうに こまったけれど くりぼうは そこから みえるけしきに かんどうしました
えだに くっついて いたときは あまりうごかなかったので たいくつでしたが
こうして けしきが かわることに かんどう するのでした
「どうだ? すごいだろう?」
「うん!」
ポチは ちかくの いけまで くりぼうたちを はこびました
ポチは したを のばして みずを のんでいます
「きゅうけいだな」
ドンたろうは 大きく いきを すいました
「ふうー くうきが うめえや」
「くうきって おいしいの?」
「もうすこし したらあ わかる」
「へぇー」
くりぼうも まねして 大きく いきを すいました
けれど くうきは あまり おいしく かんじません
「んー」
「まだまだ だな」
くりぼうは すこし ざんねんな かんじが しました
「みてみぃ ちいさな さかなが およいでる」
ドンたろうが 言いました
くりぼうは せのびするように のぞきました
すると いけから さかなが かおをだしました
くりぼうは げんきに あいさつを 言いました
「こんにちは!」
「……」
ちっとも へんじは かえってきません
「こ・ん・に・ち・わー!」
「……」
なんど 言っても おなじでした
「さかなは ときどき すいめんに かおをだす。たぶん すいちゅうが くるしいから だね」
「さかな なのに?」
「さかな だからさ」
ドンたろうは なっとくの いかない こたえを かえしました
「ぱくぱく してるね」
「たまには そとの くうきを すわなあ」
ドンたろうは くりぼうに そう言いました
ポチは げんきを チャージしおえると また はしりだしました
ポチは きゅうに とまりました
「なんだぁ?」
ドンたろうが 大きく 口を あけました
よく見ると ムギワラとんぼが じめんに とまっていました
「ムギワラとんぼ じゃぁ」
「とんぼ? とんぼって あの?」
「そうだ。 おれたちより そらが とべるぶん じゆうだな」
「いいなぁ」
「でも あしは ない。あるき たくても あるけない」
「へぇー」
「かみさまは ばんのう を あたえないんだぜ」
「ふうーん」
くりぼうは わかったような わからないような うなずきを ドンたろうに かえしました
「ぼく あしはないし はねもない。 こんなの ふこうへいだよ」
そして ふまんを ドンたろうに いいました
「ほんとうに そうおもうのかい?」
「だって ほんとうの ことだよ」
「あしがなくても はねがなくても おれたちは いきることが できる」
「……」
「あしがあっても はねがあっても いきられないんじゃ いみはない」
「……」
「おれたちは しょうらい りっぱな木になる。 それは まわりに たすけられてのこと。 でも いがいなところで おれたちも まわりのやくに たつんだぜ」
「どんな?」
「大きく なれば ひかげが できる。 きゅうそくの やくにたつ」
「ほかには?」
「とりたちが おれたちの えだに よりみちを するんだ」
「ふうーん」
「そして きゅうそくの おれいに 歌を うたいはじめる。 それはきっと たのしいことだと おもうぜ?」
「んー そういわれれば そうだね」
「おれたちは ひとりじゃ いきていけないんだ。 みんな たすけあって いきているんだ」
「なんとなく わかってきたよ」
くりぼうは すこし かしこくなった 気がした
ドンたろうと くりぼうが はなしていると いつのまにか ムギワラとんぼは いなくなっていた
「シオカラとんぼ と あそぶ やくそくが あるんだろう」
ドンたろうは くりぼうに 言いました
ポチは また はしりだしました
ひが くれかかって きました
ポチは ドンたろうと くりぼうを もとのばしょに おくりかえすと 「またね」と 言って かえっていきました
「たのしかったかい?」
「もちろん!」
「また あそぼうな」
「うん!」
ドンたろうと くりぼうは また あそぶやくそくを すると 大きな 木のしたで くれかかる ゆうひを みつめるのでした
「いちにち がおわるな」
「そうだね」
「あしたも おなじ ひが くると おもうかい?」
「あたりまえだよ!」
ドンたろうは ちょっぴり さみしそうに ゆうひを みつめました
それを くりぼうに きづかれないように からわらいを しました
「なにが おかしいの?」
「いや なにも」
ドンたろうは わかっていたのです
きのみ は どうぶつたちの えさになることを
なにもできず くさってしまうことも
あしたという ひは かならず くるとは かぎらないことを
でも ドンたろうは このことを くりぼうには いいませんでした
それは ドンたろうの やさしさであり きびしさでした
それに これは 〝おしえようとも おしえられない〟 だいじな ことだと おもっていたのです
「くりぼうが りっぱにそだつことを ねがうよ」
「きゅうに どうしたの?」
「なんでもない」
ゆうひは しずみ よるを むかえました
どんぐりばたけには たくさんの どんぐりのみ と 十数本の どんぐりの木 が ありました
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
m(_ _)m
【童話】どんぐり とろり。 @towanosakura
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