シンボルと練度
- ★★★ Excellent!!!
副題のハンバーグと春雨はひき肉とお腹の中に納まった消化器官の様子みたいな感じがします。料理の場面が早いうちに見せてそこからオレンジがかったコーンスープ、柑橘系の何かも出てきます。
オレンジがかったコーンスープは他にもタイトルの煤と黒い靴下、パステルイエロー、生血と繋がってる感じがします。
食と色でシンボルが繋がっているから、散文的な主人公の自意識の描写がまとまっています。
小説で不確かな精神を表現するのって矛盾します。だって不確かな人は雄弁に語ったりできない。だから散文的に書かないといけないのだけど、それだと文章として伝わりづらい
この物語では不確かな精神を書くためにすごく丁寧に散文的に節々を綻ばせてあるのだけど、食と色の2つのシンボルが軸にあるので伝わりやすい。しかも『さまざま奪われて食と色にしか感知が向かない状態』と読めてすごく自然。うまいです。
おすすめです。