人の心の弱さがリアルに描かれた傑作エッセイ
- ★★★ Excellent!!!
※読み合い企画からのレビューです
我々は、ニュースで報じられる犯罪者を見て、「馬鹿だなあ」「捕まるに決まってるのに」と平気で口にする
多くの犯罪者には同情すべき動機もなく、自分はしない、自分は関係ないと他人事でいる
だが、地獄への入り口は、ほんの一歩外れた場所に開いているのだ
本エッセイは、その「バレるに決まっている」犯罪行為に手を染めてしまった筆者の友人の物語だ
同情はできない
納得もできない
だが、そこには彼なりの「理由」があり、そして、その「理由」は決して他人事なんかではないのだと思わず背筋が寒くなる
最初から事を大きくしたかったのではない
ほんの小さなことから、まるで坂道を雪玉が転がっていくように、大きくなっていってしまったのだ──と
もし、彼に、失望される恐怖を乗り越えられる強さがあれば、こうはならなかっただろう
我々にできることは、ただひとつ
彼の行為を反面教師として受け取り、最初の一歩を踏み外さないことだ
そんなことを考えさせられる本作、是非手に取って読んでみてほしい