第6話 登校の時間。

「お父様、お母様、行ってまいります。」


家を出ると、今までの私が目に映るようでとても怖かった。

でも、今の私は違う。堂々としていればいい。怖がることなんて何も無い。前の私ではいられない、現世は、もっと楽しく生きるの。


私は学校への一歩を踏み出した。


「久堂さん、よければ一緒に学校に行きませんか?」


通学路の途中で、そう声をかけて走り寄ってくれたのは早崎さんだ。

前世では、同じクラスだが、ほとんど関わりはなかった。彼女はクラスではマドンナ的な存在で、クラスの中心人物だった。


「わ、私でよろしければ。」


「私ね、久堂さんとお話してみたかったの。私も名家の育ちだし、しかも、私達和風なお家柄じゃない?色々話せるんじゃないかと思って。」


「早崎さんのお家はお着物を扱われるお店なんですよね?」


「そうよ。久堂さんのところは和風なお家柄ですよね。お着物も着ることがあるでしょう?どこのお着物を着ていらっしゃるの?」


「うちは、桜呉服商店さんの着物を古くから使っています。けれど、早崎さんのお店のお着物を着させてもらったことはありますよ。」


「そうなのね、とっても嬉しいわ。」


「でも、最近はお洋服が多くなっていて、お着物を着る機会も減ってきていて…。私はお着物、大好きなんですけどね。」


「わかる、本当に減ってしまっているものね。もっと文化を大切にするべきだわ。」


「だからこそ、私達、和の伝統を受け継ぐ者がもっと広めないといけませんわね。」


「さすが久堂さん、分かっているわねぇ。そうよ!頑張りましょう!」


そんな会話を交わすうちに、あっという間に学校に着いてしまった。

こんなにも楽しく登校できた日は、初めてだ。私にも話しかけてくれる人がいるんだと、少し嬉しかった。早崎さんには感謝しかない。

この調子なら、クラスや学校でもうまくやっていけるかも。


少し期待してみることにした。

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もうこの世界には疲れましたので、来世に行ってもよろしいですか? 彩音 @wkmk0506

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