見えない禁忌と絡みつく陰惨たる邪慾。狂気を超えたホラーに耐えられない。


この物語はたびたび登場する虫――それも常軌を逸した特異的な描写――が可能とする穢欲が臭い立つ湿度の高い陰惨たるホラーだ。

病死とされた肉親の死因。忌女の祟りが呼び寄せる禍痕の痣。口から湧いて出る虫がなんとも悍ましい。
その死の秘められた謎に興味を加速させる展開が憎いほど巧みと言わざるを得ない。
それを可能にする村を支配する力の存在が見えない形で頭上を覆っているような感覚。
謎が謎を呼ぶ極度に閉塞感のあるこの村で一体、何が起きているのか。

何が嘘で何が真実なのか……
誰が敵で誰が味方なのか……

恐怖と、混乱と、狂気と……もち上がる臓腑に何回吐いたかも分からない胃液の中から這い出てきた蠢く存在。
目を疑いたくなるそれは、身の毛のよだつそれは、確かに息衝いて……

それが真実なのか。

何もかもがわからなくなって、どうしようもないくらい感情が混乱して、痛くて、痛くて、死んでしまいたくなるほど痛めつけられても死ねない私。

視界不良なホラーが外郭から内側へ這いまわる蟲のように忍び寄る。

あなたはこの恐怖に耐えられるか?

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