ミミック(宝箱)の彼は、彼女のために何をする?
- ★★★ Excellent!!!
カタ、カタ、カタ、カタ。カタ。カタ、カターン、カタ、カタ。カタ、カターン、カタ、カタ。カターン、カターン、カターン。
皆さん、これが何かわかりますか? モールス信号(長い音と短い音を組み合わせてメッセージを送る方法)で言うところの、HELLO。つまり、挨拶です。
わざわざモールス信号なんてやってないで、挨拶なら普通にやれって?
本作の主人公ヒムロも、できることならそうしたいのです。けどできない。なぜなら、彼は転生してミミックに生まれ変わったから。
ミミックっていうのは、宝箱の形をしたモンスターです。口がないので、当然話せません。足がないので移動もできません。できることといったら蓋をパカパカさせることくらいなので、それを使って誰か気づいてくれないかと、モールス信号を送ることしかできないのです。
そんな彼からのメッセージを奇跡的に受け取ったのが、冒険者のヒナさん。しかも気づいてくれただけでなく、ヒムロを外へと連れ出してくれて、一緒にパーティーを組まないかとのお誘いが。
ここまで見ると、あとは楽しくて騒がしい異世界ライフの始まりかと思いそうなのですが、本作の大きな特徴はこれから。
強くてカッコかわいいヒナさんに惹かれていくヒムロですが、実は彼女には秘密があり、想像以上に重いものを抱えていたのです。
それを知った上で、ヒムロそしてヒナさん自身はどうするのか。
悩み、時に苦しみながら答えを探していく様子がとてもシリアス、かつ考えさせられ、非常に読み応えのあるお話となっています。