旅先で見つけた、その先の景色

痛い失恋したばかりの主人公が降り立ったのは、見知らぬ駅。潮の香りが混じる風、静かな波の音、無人の改札。そして、偶然の出会い。

この物語は、旅の空気そのものだと思う。

どこか遠くへ行きたくなるような風景描写、旅先ならではの不思議な時間の流れ、初めて会ったはずなのに懐かしさを感じる誰かとの会話——そうしたひとつひとつが、じんわりと心に染みてくる。

派手な出来事があるわけではないけれど、静かに心が動いていく。

立ち止まっていたはずの足が、いつの間にか前へ進みたくなっている。そんな読後感を味わえる作品でした。

ラストのセリフがなんとも良いです。

旅が好きな人はもちろん、日常に少し疲れた人、新しい一歩を踏み出したい人に、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。

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