世界観が作りこまれたボーイミーツガールSF
- ★★★ Excellent!!!
語彙力が素晴らしいと思いました。説明文が巧みで、完結に説明されている点も読み進めやすいと感じました。
少女が舞い降りてくるところを冒頭に置くことで、「あの少女はいったい何者なんだろう?」という謎が始めに提示されていて物語に引き込まれました。
世界観の作りこみ度が高く、ユートピアがディストピアに変わった世界で葛藤するユウキの壮大な冒険の始まりにはわくわくしました。
また、導入では「謎の少女」として表れたヒロイン、リベルのキャラクター性が輝いており、初めは残忍で残酷な存在かと思われていたのに、ユウキと行動を共にするうちにユウキの言う「人間の輝き」に看過され、変わっていく過程がとてもよかったです。
表現力が巧みで、
「親友のために怒りを爆発させるその姿に、ユウキは胸が熱くなった。」
この一文は、ユウキとケンタの親友関係が、物語が始まるよりももっと前から構築されていて二人の間には強い信頼関係があるのだということを一文で表現できていて素晴らしいと感じました。
また、
「ケンタの顔には、不思議なほど爽やかな笑みが浮かんでいた。まるで、長い間背負っていた重荷から解放されたかのように。」
この一文も、反乱勢力として見なされてしまった「恐怖」と、それに抗うように微笑み、同時に「我慢してきたことを解放した」ことを一度に表しているテクニックを感じる一文だと思いました。
物語りが進むにつれて真相が明らかになっていき、ユウキは衝撃の真実を知る……という王道なストーリー性もよかったです。