第8話 七種族会議
サラ、メル、スー、クロード、デュース、美弥の6人に手紙が届いた。
『伝承より、勇者が召喚された。七種族の王あるいは旧王は、至急クレフィリア王国へ参られよ。』
魔族暦6月某日。
雨が降りしきるとある日、クレフィリア王国王城。
豪奢な服や色とりどりの装飾、人々によって絢爛たる景色が作り出されていた。
「ごきげんよう、お姉様。」
「お元気そうで何よりだわ、美弥姫。」
「お前たち、王位を易易と譲渡するなど、情けない。」
「あなたみたいに意地っ張りじゃないのよ。」
「あら、その宝石、きれいね。」
「国宝ですもの。そちらの服も、装飾にこだわっていらして…。」
「職人たちが丹精込めて作ってくれましたわ。後ほど伝えておきますね。」
豪華絢爛、とはまさにこの光景を言うのだろう。
「シャナ様、紅茶が入りましたよ。」
声をかけてくるのは、正装を着たクロードだ。初めて会ったときと同じ。
黒髪を後ろで三つ編みにし、群青の服を着ている。後ろにはゼレンも控えている。
「クロードは、相変わらず下僕をやっているの?」
「下僕ではない。お世話係だ。失礼な言い方をするな、サラ姫。」
会話に加わったのは、正装のサラ・ノヴァ。
紫色の髪を丁寧に結い上げ、淡い紫の豪奢なドレスを身にまとっていた。
「そういえば、今日はメルはいないの?」
「メルはお留守番です。昨日はしゃぎすぎて熱を出してしまったので。」
「あらあら。」
「シャナ様、お話中ですが、ご挨拶申し上げます。」
歩いてきたのは二人の少女。
声をかけたのは小さい方の少女、鈴美弥。薄い桃色の髪を愛らしく結び、瞳と同じ、翡翠色のひらひらの飾りのついた和服を着ている。頭に挿した簪には王のみ使える桜の花の意匠が入っている。
隣りにいるのは、おとなしい雰囲気の少女、スー・リンこと鈴鄒花。
赤い髪を一つにまとめ、いつも通り眼鏡を掛けている。淡いピンクのドレスに、白のカーディガンを羽織っている。
「みなさま、お揃いですか?」
「待て、私がまだ挨拶していないだろう。」
「失礼、どうぞ。」
「うむ。シャナ殿、ご挨拶申し上げる。」
偉そうに、そして不服そうに話したのは、長い金髪を後ろでまとめ、正装の新緑の服を身にまとうエルフ族長、デュース。
これで、全員揃ったはずだ。
「それでは、会議を始めようか。みんな、席について。」
円卓に座る七人。それぞれの斜め後ろに補佐官が立っている。
「まず、人間界に勇者が召喚された。私達、人間以外の種族の存続が危ういということだ。そのため、こうして会議を開くことにした。なにか、対策はあるかしら。」
流れる沈黙。
「ないわよね、いきなり言われても。」
でも、何もしなければ、確実に滅ぼされる。だって、私は見たから。
「とにかく、まずは各国軍備を強化し、そのうえで対策を練るべきかと。」
発言してくれたのはクロード。
でも、たぶんそれじゃ間に合わない。
「たぶん、間に合わないわ。私の考えを言ってもいいかしら。」
一応、考えはある。
「もちろんですわ!」
「聞かせてください。」
みんな、聞いてくれるみたいだ。
「きっとこの方法を取れば、この国は混乱を招くわ。それに、エルフ族にとって屈辱的かもしれない。だから、一つの案として聞いてほしい。」
そう前置きをして、考えを話し始める。内容はこうだ。
まず、各国にたくさんいる国民を一つの国にまとめる。そしてそれは、結界を張ってあるクレフィリア王国が最も適している。
そして、種族関わりなく『クレフィリア王国軍』として協力し、ともに敵を倒す。
そのためには、まだ結界に適合していないエルフ族、仙人の血を私が吸わなくてはならない。
完全に服従しているわけじゃないエルフ族も、ほぼ服従に近くなる。
「それをふまえて、どうかしら。他の案があればそれでもいいのだけれど…。」
再び流れる沈黙。
「もはや、それしかないのだろう?聞くまでもない。私は賛成だ。」
そう言い放ったのは、意外だったがデュースだった。
「いいの?エルフ族も服従する形になるのよ?」
「今だけ、だろう?人間を倒すまでだろう?なら、構わん。」
一番懸念していたことは解決した。
つまり、これからは行動するだけ、だ。
その後、各国に王であるシャナの名で布告が出された。
『人間に対抗するため、同盟国の国民は、全員クレフィリア王国に移動せよ。王国では居住、衛生、警備などすべてにおいて安全を保証する。各自、速やかに移動し、その場の王国軍の指示に従うこと。』
救済の少女 鬼郷椿 @Tsubaki_K
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