第4話緊急会議

青く澄みわたる空の下。教会の鐘が鳴り響く。

街のあちこちに水路が張り巡らされ、橋が掛けられている。中世ヨーロッパを彷彿とさせる赤煉瓦作りの建物が建ち並ぶここは、ルーヴァスの首都ウェイン。


街の中央には王宮があり、西側に聖ミハイルの大聖堂が隣接している。

礼拝を終え司祭の壮年男性。溜まっていた事務仕事を片付けようと教会中央のレッドカーペットが敷かれた通路を通り、聖書片手に自室に戻るところだった。

「ベネリクトさん少しお時間よろしいですか?」

ふと前方から歩いてきた副司祭の青年男性に呼び止められた。

「どうしたんだね。アルベルト君」

「先日、国王様と王妃様が何者かにより殺害されたでしょ。未だ王女様も行方不明とあって大臣達が緊急の会議を開くそうです。ベネリクトさんも参加してほしいと」

「わかった。すぐ王宮へ向かう」

「あとの仕事は私がやっておきます」

会釈をしアルベルトは去っていった。

ベネリクトは教会の入り口横にある階段を使い、自室へ戻ると聖書を机に置き、王宮に向かった。


王宮とは石作の渡り廊下で繋がっている。アーチ状の屋根が掛けられた廊下を抜け、中に入る。

入ってすぐ大広間があり、左側には貴賓室がある。

扉を開けると中央に長テーブルが置かれ、周りを囲む様に二十人ほどの要人が座っていた。

ベネリクトは空いている椅子に座る。

「よし、皆揃ったな。今から緊急会議を始める」

大広間の扉近くに座っていた初老男性の声かけから緊急会議は始まった。


初老男性の名はフィオーネ・カーミラ。国務大臣を務めている。

議題は今誰が国王の代わりを務めるかということだ。

このまま王が不在という状況はあまり好ましくない。

「そこでだ。王様の弟君であらせられるエミリオ様を推薦したいのだが」

「エミリオ様はお身体が弱く常に床に伏せっているのでは?」

初老男性の右隣、隣国シャロン大使の中年女性が口を開く。

「それは見せかけではないのか?リディア。エミリオ様は女遊びがたえず酒癖も悪く、おまけになりふり構わず人を殺めると言う噂がある」

フィオーネが口を挟む。

「しかし、他に候補になる方がいるかしら」

「わたしの息子ダンテを推薦しよう」

フィオーネの左に座る左派のアルヴァーノ・ロゼッタだ。

「前国王の側近を務めたと聞いているから良いのではないか、アルヴァーノ」

「そうね、それが良いわね」

全会一致で会議が終わった。









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リタと魔法使いの国 京那 @risa47

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