第3話ある夜の出来事
「ある日、城に何者かが侵入。厳重に保管されていた魔法石の原石を盗もうとしたの。石を守っていた兵士が魔法で戦ったけど相手が強すぎて」
(城でそんな事が)
「兵士は?」
「なんとか石を守り抜いたけど傷が深くて死んだらしいわ。死に際駆けつけた魔法使いの仲間に石を託したの。そしてマントのフードを目深にかぶったその仲間は石を持って逃げたってわけ。ここまでが十一年前の話しよ。」
そういえば十一年前母が家を出るときキャリーバッグにマントをしまうのをみていたのを思い出す。
「すべてお母様から聞いたのだけど」
「仲間の名前は?」
「杏里」
杏里は壮介の母の名である。ずっと死んだと聞かされてきたが生きていたとは。
嬉しさに自然と涙が零れる。
「なぜ泣いているの?」
「母さんの名前」
「あなたのお母様の名前だったのね。そんなことより私は十一年前の泥棒に手下がいて命を狙ってるの」
(そんなこととはなんだ。ざっと説明されて頭が混乱しているが母の事が知れて良かった)
「とりあえずここをでましょ。続きは道々話すわね」
涙を拭う。
二人は飲み物を飲み干した。壮介が会計をし、店をあとにする。
駅のホームで帰りの電車を待っている間リタは先ほどの続きを話して始めた。
「実は、王女なの。一週間前になるかしら。側近のライアン・ジョシュアにお父様とお母様が殺されて。私はそれを物陰に隠れてみていたわ」
淡々と話すリタ。
「そのあとライアンが異能力者を追手として放ったの。身の危険を感じ国から出ることに。日本行きの貨物船の積み荷に紛れて出国したわ」
電車が到着する際、乗客に紛れた追手が辺りをうかがっているのがみえた。慌てて壮介と電車に乗り込む。
だが、追っては運悪く同じ車両に乗ってきた。
「離して」
嫌がる声が聞こえ振り返ると追ってがリタの腕を捕んでいた。
「その子の腕を離せ」
壮介は追っての手を払いのけ蹴りとばし、電車を降りた。
電車が動き出す。
追っては立ち上がり背中を擦りながらドアごしに二人を見ていた。
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