文語調の語り口と反復される売り声が強いリズムを生み、読んでいるうちに現実と異界の境が曖昧になっていく感覚が秀逸です。何気ない日常が静かに崩れていく不安と恐怖がじわじわと広がり、読後に強い余韻を残します。短編ながら、忘れがたい印象を残す一編でした。
夢から醒めてみれば、耳にひびくは戸外からの聞きなれぬ声。水母の乾物、そんな聞きなれぬ声に、かすかな興味をそそられて。いつものごとくに妻と言葉を交わし、朝飯の菜に買ってきてくれと、何げなく頼んでみた。その彼方には……。あなたもどうぞ、表へ出ていらしてください……水母の干物を買いに。
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