梅雨が明けきらぬままに夏の足音が闊歩する時節。詳しいことは語られないが、かつての権勢を失い、俥屋らにも莫迦にされる主人公。嘲笑と暑熱に打ちのめされながら、咲きほこる夾竹桃がのぞきこむ停車場の待合に座っていると。その心の隙間に忍び込んだかのように、カラカラと笑う怪異がその場に闖入してきた。炎暑のなかに毒を含んであざやかに咲き誇りながら、夾竹桃がその有様を嘲笑う。
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