2人の孤独

戦時下に結ばれた愛の物語です。

うまいなと感じたところが関係の歪みです。はじめからまっすぐな関係性を描くのではなく、歪にバランスのとれた関係が戦争の混乱の中で危機にさらされ、これまでのバランスを崩して正しい形で結び直されます。

この2人は常に互いの親に連れられ、その後は不倫相手という他者の存在を持って対称性を保っていて2人だけの関係ではバランスをとれない様子でした。戦争によって離れることでやっとお互いだけで結ばれることができています。

この物語の示唆するのはただ共に生きるということが愛ではないということだと感じます。決して不倫を肯定しているわけではなく、「危機を乗り越えるかどうか」なのだと感じます。危機にさらされて価値を結ぶこともある。平和に生きる私達はただわがままに共にいることだけを求めてしまいます。そうして距離や不安の中でも共に生きるべきだということを忘れてしまいがちです。この物語はそういうことを問い直しているのかと思います。

おすすめです。

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