誰にも言えない、あの日の神社で

 まるで夕暮れの木漏れ日のように、懐かしさと不思議が同居する物語でした。

 語り手の柔らかな口調が、幼い日の記憶をゆっくりと手繰り寄せるようで、読み進めるほど胸がきゅっと締めつけられます。あの日の出来事は本当にあったのか、それとも夢だったのか――残された余白が、かえって物語の深みを増しています。

 静かな川のせせらぎ、蝉しぐれ、和服の子。夏の終わりにだけ訪れる、誰にも言えない小さな奇跡のような物語でした。

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