誰かの死を美談にしてはいけない――けれど

級友の「生」と「死」をめぐる物語を、これほどまでに多面的に描き出した作品には、なかなか出会えない。冒頭から引き込まれたのは、死を単なる終わりや悲劇として描くのではなく、それによって何が残され、誰が変わるのかという問いに、誠実に向き合っているからだ。

廃校舎の描写から出会い、追想。どれもテンポが良く読みやすかったと思う。

読者として、私はこれまで「誰かの犠牲によって誰かが救われる」という展開に、ある種の嫌悪感を抱いていた。そんなものは都合のよい美談でしかなく、正当化されるべきではないと。

だがこの作品は、その「正しさ」すら相対化してくると感じた。残された者の想い、迷い、そして結架の決意の描写は、単なる物語にとどまらず、読者に深く問いかけてくると思う。

どちらが正しいのか。それはもはや意味のない問いなのかもしれない。そんなふうに、価値観が揺さぶられる読書体験だった。

とまあ慣れない丁寧な口調でレビューを書いてみたんですけど、とにかく!趣深い作品だったと心から思います✨