しいずん2 オニごっこ 東京編
しいずん2 開幕
疲れた体に鞭打ち、なんとか今日の業務を終わらせる。
すっからかんの終電にギリギリ乗り、心地よい揺れで思わずうとうとしてしまう。
自分の体の健康状態はとても悪いと自負しているが、この前の健康診断で再検査になり、肝臓の機能が低下していると言われたときの衝撃は今でも忘れれない。
憂さ晴らしにビールを毎日二、三杯飲んでたからな…そりゃ言われても仕方ないか。
段々眠くなり、窓に体を預けるようにして眠る。その後、終点駅まで乗り過ごしたのは言うまでもない。
払いたくて払ったわけではないタクシー代を払い、家まで着く。
眠い目を擦りながら、何も入っていないであろうポストを開ける。
「なにこれ…巫山戯てる…」
その紙には、このようなことしか書いていなかった。
『げぇむに参加しますか? どちらかに丸をつけて下さい。
・参加します ・参加しMouse』
災難が続いているな…この前、妹が急に居なくなって見つかってないってのに…
やるせなさを紙にぶつけ、胸ポケットに入っていたペンを使い、参加しMouseのほうにグリグリと丸をつける。
「はぁ…」
ここで体力が底をつき、寝そうになるのをなんとかし、鍵を締める。
そして、そのまま深い眠りについてしまった。
「んあ…?ここどこ…?」
周りには10人ほどしか人が居ない。しかも、私が一番後に起きてきたらしく、他の人達はのびのびと何かをしている。
起きたタイミングを見計らったかのように、少し音割れしたスピーカーから声が聞こえる。
『やぁ…皆。お早うさん。』眠そうな声が上から聞こえる。声だけを聞くと、男性の声だった。その時、穏やかそうな顔をしている男性が、やはり穏やかな声でゆっくりと話す。
「すいませ〜ん…どうして私達はここに連れていかれているのでしょうか…?」
全員が気になっていたであろうことを言ってくれる。凄く有り難い。
『あぁ…言い忘れてた……ごめんなぁ…一徹なもんで…ふぁぁぁ…じゃあ、これで分かる…?』
彼は名前を一人一人言っていく。
『氷室 雅、大久保 愛理、藤堂 紫苑、獅子 涼成、獅子 涼気、宮田 飛鳥、光 闘優』
「なんで…なんで妹の名前を…」
絶句した。居なくなった愛理の名前を知っている。こいつが攫ったのか。沸々と怒りが湧いてくる。
誰が叫んだりしてもおかしくない雰囲気になった瞬間、機械音がそれを打ち壊す。
『安心しろぉ…突然だが、世界は3つある。今、彼らは2024年の世界にいる。生き延びたって訳だ。ほら。光と藤堂は孤児院で楽しく過ごしてる。獅子兄弟は涼成の疑いが晴れ、楽しくショッピングをしてる。』
次々とモニタニング映像を見せてくる。私達が住んでいる世界より技術が進歩している。
『そして、氷室、大久保、宮田の三人…他の生還者と一緒にそいつの家でほうとうを食べてるな。』
一先ず生きていたことに安堵する。胸をなでおろしたのもつかの間、私達は今ここにいるという実感をさせられることになる。
オニごっこ〜無自覚の罪〜 むぅ @mulu0809
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