『レオナルドとベアトリーチェ』は、冒頭の『ある女の死』で毒と嫉妬の破壊力を突きつけ、その惨劇が後の宮廷へ火種として残り続ける構えが鮮やかである。愛が宝石であり、同時に危険な薬でもあるという宣言が、全体の空気を決めている。
華やかな場面ほど本音が漏れ、残酷さが際立つ。馬上槍試合で父のために振る舞うレオナルドと、女であることを刺されながら舞台に立つベアトリーチェが並ぶことで、同じ場所にいても自由の重さが違う現実が見えてくる。
舞踏会でガーターが外れ、『はしたない』と糾弾される一幕も印象的だ。レオナルドが彼女を連れ出す救いはあるが、その細さまで描かれている。さらにジュリアが媚薬を差し出す場面が、愛の劇が罠へ転じる気配を強める。前半だけでも、欲と立場に縛られた人々の『選べなさ』が緻密で、続きが気になる。
注
ネタバレを避けるため、序盤の10話程度までのレビューとしました。
西洋史に疎い私は、はじめに題名を見たとき、ベアトリーチェと言えば、かのダンテ・アリギエーリの永遠の恋人しか頭にありませんでした。
ところがそのベアトリーチェの心清らかさそのままに、プラス!ガーターを履いて鎧を着、躍動感に満ちた女騎士と貴族たちとの物語なのだと知り、おお、と胸が高まりました。
こざかしく下衆い男どもが多い中、いい人間もたくさんいて、彼女の心の輝きが物語の隅々最後までをあまねく照らしています。
個人的にはゲラルドとジュリアちゃんが一番好きです。ゲラルドがもっともっと早い時代に生きていれば、きっと煉獄でダンテとヴェルギリウスに出会って、ダンテに励ましの言葉をかけてもらえたに違いありません。
また、ジュリアちゃんの幼い心に宿る狂った恋は、オペラができてもおかしくないレベルで、大好きです。どなたか、ミューズの御力を借りて、荒川先生のこの作品でオペラを作っていただけないでしょうか。(かなりジュリア寄りの悲喜こもごもなやつ、ゲラルドは絶対にバリトンでお願いしますwww)
私のこのレビューで、どれほどの方が関心を持っていただけるかちょっと分かりませんが、立ち寄られた方は、ぜひ一度お読みください。
ロレニア国の王女、十五歳のベアトリーチェ。
彼女は父王の失策による敗戦の尻ぬぐいで、三十歳以上も年上のオッタヴィアーノに嫁ぐことになります。
結婚相手のオッタヴィアーノには前妻との間に、新婦のベアトリーチェより二歳年上の娘や、ベアトリーチェと同い年の息子がいる始末。
ベアトリーチェの結婚はひどいものでした。
と、ここまで見ると、悲惨な結婚による陰々滅滅なお話かな、と思ってしまいますが、読んでみると、いじわるをされたりはしますが、全体的にあまり暗さを感じないんです。
状況は確かによくないのですが、主人公のベアトリーチェが気取らず、活発な性格であるのが救いになっているようです。
やがて活発なベアトリーチェは、馬上槍試合にも出るようになります。
そして出会ったのがレオナルドでした。
不穏な国家間の情勢のなか、ふたりはどうなっていくのでしょうか。
人々の欲望、思惑、政治の動きが絡み合い、とても興味深く面白い作品です。
許されざる恋、けれど、離れがたい気持ちで結ばれたふたりの行く末をぜひ、見届けにきてください。
エミリア侯国に続く300年の呪いが、まるで歴史そのものの影のように作品全体を包み込んでいます。『レオナルドとベアトリーチェ』は、愛と宿命が複雑に絡み合う壮大な舞台劇。政略に囚われた者たちがそれでも希望を見出し、愛することを選ぶ姿に胸が締め付けられます。
レオナルドの葛藤は、古い体制と未来への願いとの狭間で揺れる人間の苦悩そのもの。ベアトリーチェは孤独な戦士として、尊厳を守りながらも共鳴する魂を求めています。舞踏会での運命的な出会いに始まり、陰謀と愛憎が織りなす物語は、美しくも残酷な一族の伝承を照らします。
一族の呪いが象徴する「過去」から、二人は逃れられるのか。歴史の奔流に抗いながら、自らの信念と愛を手にしようとする姿は、時を超えた共感を呼び起こすことでしょう。
レオナルドがタイトルの初めに来ていてキャッチコピーもレオナルド中心になっていますが、私が誤解していなければ、主人公はベアトリーチェです。彼女は強くあろうと頑張って人々のために奮闘するのですが、賢くて強い一辺倒ではなく、愛のために理性を失う人間的な面もあり、共感しました。でもベアトリーチェだけでなく、男性キャラも魅力的でした。
実は、1人の男性が3人の女性を侍らすハーレム展開かと思って、最初ちょっと読み始めるのを躊躇していました。でももうすぐ完結すると知って読み始めたら、それは誤解と分かり、一気に読むほど没頭しました。この物語には、ハーレムとかそういう流行要素はなく、シリアスな本格的ヒストリカルロマンスで、設定もすごく詳細でしっかりしています。残念ながらそういう作品がWeb小説には少ないので、私はこの作品に出会えてよかったです。