第4話 イチバ班の強襲
「ミズも行きます」
「気をつけて動かないとダメだよ、ミズクー」
ヒノメに駆け寄ろうとする二人の足音が聞こえたとき、それをかき消すような騒々しい弦楽器の音が鳴り響いた。
「あんたらはあたしの
背後の声を聞いてヒノメが振り向く。その隙を狙いイチバの猛烈な刺突が放たれ、危うく身を反らして回避。体勢を崩したヒノメと位置を入れ替えるように、イチバが後ろに回り込んだ。
「
その一言で誘い出されたことに気付き、ヒノメは悔しげに歯噛みする。笑うイチバとその後方の光景がその瞳に映っていた。
建物を振り仰いでいるムイとミズクの視線の先、屋上で弦楽器を手にする
『イチバ班の問題児。その名は、ライミ・カマイシ・〈
「ありがとゥー!
ライミが弦楽器をかき鳴らし、思ったよりも低音で規則正しい音律が一同の耳朶を打った。
「どうしてライミさんて、その感じでベースなんですかー⁉ そのイケイケな雰囲気はギターだと思うんですけどー……!」
「んだとコラー! それは偏見じゃん! ベースこそ音楽の魂ってこと、思い知るじゃん!」
「ごめんなさい、ごめんなさーい!」
涙目で両拳を口元に当てて怯えるムイへと、ライミの
『ライミちゃんの加護、〈音律感じるべし〉が炸裂! 自身のベースを中心にして、広範囲に放射される電撃から逃れるのは難しい! ムイちゃん、どうする⁉』
「ごめんなさい、どうもできないですぅ……」
小声で応じるムイは、電撃が逸れてもその場で防壁を展開し続ける。
ライミは加護によって、ベースを演奏している間だけ電撃を放射することができる。電撃というのも便宜上で、実際はハナビラが凝縮された力であり本物の電流ではない。
ムイは防壁を形成したまま動くことができず、その場に足を縫い留めている。いつもイチバ班との試合では、この方法でムイが無力化されていた。
「ムイぴょん、今助けます」
「気を付けてミズクちゃん!」
ヒノメの警告を聞いてミズクが動きを止める。奇襲を受けて動揺していたミズクも、もう一人の敵が残っていることを思い出したらしい。
突如、ライミの立つ建物の窓を割って人影が飛び出した。
『さあ! 最後に登場したのは、モミジ・トオノ・〈
モミジが地面に掌を着くと、そこを起点にして燐光を発する文様がミズクまで伸びていく。
反射神経も運動能力も劣るミズクは棒立ちのまま。足下まで走った文様から衝撃波が放たれ、ミズクはなすすべもなく弾き飛ばされる。
「足りないよね。注意力がさ」
茶色の長髪をしたモミジが言い、焦げ茶色の瞳が静かにミズクを見据える。異様なのは、その肌が全身朱色に染まっていることだった。上下ともに露出の多い服装をしている
『開花したモミジちゃんは、恒常的に自身の防御力を高める朱色の肌を有します! 汎用性の高いモミジちゃんは、イチバ班の戦力を底上げする地味ながら優秀な能力だー!』
「ミズクちゃん!」
ヒノメは斬撃を放ち、イチバが体を開いた空間を突っ切る。疾走するヒノメの背後で、イチバが追いかけてくる足音が続いた。
地を転がったミズクが立ち上がったとき、モミジが再び文様を路面に描いている。
「隙だらけだよ!」
イチバの声を聞きながらヒノメが援護に回り、ミズクに辿り着く前に文様から発する衝撃波を受け止めていた。だが、イチバの狙いはヒノメではなかった。
「危ない、ミズク!」
ムイが防壁を解いてミズクの元に駆けつける。ムイがミズクを突き飛ばすと同時、獰猛に輝く槍の先端がその長身を貫通していた。
「ムイちゃん! クッソー、やられた!」
イチバの目標が自分ではなかったことに気付き、ヒノメは後悔と怒りを声に乗せて叫ぶ。
槍が引き抜かれ、ムイの腹部から燐光を帯びたハナビラが鮮血のように噴出する。紅のハナビラが舞い散るなか、槍を振りかぶったイチバがトドメの一撃。
バッサリと左肩から胸までを斬り下げられたムイの瞳が空虚になる。瞬時にムイの全身がハナビラと化し、内側から破裂するように拡散した。
『
試合で初の撃破とクロワの実況により観客が沸き立つ。
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