第5話 ヒノメ班、全滅
「よくもやってくれたね!」
ヒノメは長刀を構え直す。数的不利ではあるものの、すぐにムイは復帰して駆けつけてくれるはずだ。それまでの時間を稼ぐ必要がある。
「おのれー。よくもムイぴょんをー」
内容の割に平坦な声音でミズクが言う。そのジト目が険しさを増しているのが、怒りを覚えていることを読み取れる唯一の証拠だった。
ミズクの操る六冊の本が、不規則な軌道で飛び回りながら光条を射出。紫の熱線に激しく身を晒され、さしものイチバもたじろぐ。モミジの加護にも限界があり、攻撃を受け過ぎると文様が破壊されてしまうのだ。
イチバが器用に槍を回転させ、盾のようにして光条を弾いて耐える。防御に手いっぱいの隙を狙い、横合いからヒノメが肉薄。それに目ざとくイチバが気付いた。
「
イチバの指示を受け、すぐさま頭上からの電撃と足元からの波動がヒノメを急襲。上下からの攻撃を防ぐすべがなく、ヒノメは慌てて逃げ惑うしかない。
「ミズクちゃん、一時撤退して!」
「ここで仕留めます」
イチバが槍を回転しつつ突進。流星のように迫る光条を弾きつつ、ミズクへと肉薄する。
ミズクも面食らったようで少し身を引いたものの、臆することなく迎撃の姿勢を取った。両手を突き出すと、その手で開かれている二冊の本が紫紺の光輝を帯びる。
本から握り拳大の光弾が発射され、目の前まで接近していたイチバに着弾。一瞬だけ眩い爆光が一帯を白く染め上げ、爆音が肌を震わせる。
立ち上る白煙と降り落ちる路面の破片が、一撃の威力を無言で語っていた。勝利を確信したミズクが嘲笑を浮かべていたが、突如としてその両目が驚愕で見開かれる。
白煙の幕を切り裂いてイチバが出現。防護の役割を果たす文様は消失し、傷だらけで各所からハナビラが散りながらも致命傷は防いでいた。
「このお礼はさせてもらわないとねッ!」
ハナビラが深紅の羽衣となり、踏み込むイチバを彩った。すれ違いざま、イチバの槍がミズクの脇腹を深く抉る。ハナビラの飛び出す右脇腹を押さえてミズクが振り返った。
すでに追い打ちの姿勢を整えていたイチバが刺突を繰り出す。槍の先端に胸を貫かれた瞬間、ミズクの小柄な五体がハナビラとなって霧散。
ヒノメの琥珀色の瞳のなかで、ハナビラが無情に舞い散っていく光景が映る。
『またしてもヒノメ班、ミズクちゃんが
ヒノメが目を向けると、イチバはその場で立つのが限界のようだった。
長刀を振りかぶって駆け出したヒノメ。その行く手に
『ライミちゃんの電撃は不規則な動きで見切るのは難しい! 迂闊に突っ込むこともできないヒノメちゃんは二の足を踏んでいますが、止まっているだけでは打開できないぞ!』
ふと、後ろに気配を感じたヒノメは振り向きざま長刀を斬り下げた。その切っ先は背後に忍び寄っていたモミジに直撃したが、刃はモミジの左肩に食い込んだだけだった。
イチバに纏わせていた防護用の文様を、今度は自身に施しているのだ。
『ライミちゃんの陽動に、思わぬ伏兵が存在! ヒノメちゃんは咄嗟に気付いたものの、その一撃はモミジちゃんを倒すには至らなーい!』
痛みに顔をしかめつつ、モミジは歩を進めて掌をヒノメの胸に押し付ける。
「これで終わり。ヒノメも」
モミジの掌からヒノメの身体に文様が広がっていく。文様の描かれた部位は素体の源であるハナビラが剥離し、ヒノメの肉体が分解するように散っていった。
激痛に視界が明滅し、その割合が増えていってヒノメの意識は暗転した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます