道に迷った男女が辿り着いた、朽ちかけた修道院。イスラム風の幾何学模様、白い薔薇、月明かり、どこからともなく聞こえてくるピアノの音。そして、回廊を横切る白い修道女――。幻想的で美しい情景の中に、少しずつ「ここは普通の場所ではない」という違和感が混ざっていきます。神聖と俗、恐怖と快楽、美しさと不気味さ。相反するものの境界が曖昧になっていくような、妖しく耽美な怪談でした。読み終えたあとには、きっとタイトルの薔薇の香りが少し違って感じられます。
古都サラゴサの修道院で出逢う、清廉で妖艶な怪異。自由も視覚も閉ざされた暗闇の中で、ダマスクローズの香りが甘い罠のように深く刻まれる。落語のオチみたいなセリフを言ってるけど、なんだか取り返しつかなくなってそうな予感がする。 読み終えた今、匂いを確認しに自分の心がスペインの古都へ旅立ちたくなっている。きっとサラゴサの異界が呼んでいるんだろうな。素敵な幻奇譚でした。
翳り深く薔薇の赤が織り成されて行きます。
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