第44話 素直③
俺は、自分の耳を
「何よ、別にお付き合いしている人がいなかったんだから、いいじゃない。皆、優しくてカッコ良くて、1人に決めるなんて無理よ」
俺は “ 水ぶっかけられたのって、コイツのせいじゃね?” と、一瞬思った。いかんいかん、自分のお母さんだ。
「お母さんね、あなたよりも恋愛はダメだったかもしれない。だって、
「へぇ~」
「もう、
「ほぉ、お
「そしてね、毎日、毎日、その5人のカッコいいところを話していたの~」
「どう、思った? コイツ、最悪じゃんって思ったでしょ。最低だなって」
「あ、ごめん。ちょっと思った」
「良いのよ。それをね、毎日、言ってたのを聞いてくれていた人がいたの」
「誰?」
「あなたの父親よ」
「はぁ!?」
お父さんに、毎日、別の男の良さを話していただと!? お母さんは、イタズラっぽく笑って見せた。俺は、まったく信じられなかった。どういう
「お父さんね、結婚して後から聞いたことがあったんだけど。その時、最初は嫌だったんだって。毎日、好きな男の話ばっかり、とっかえひっかえ、この女はって」
「えっ? お父さんとは、その時、どういうご関係?」
「う~ん、話を聞いてくれる、ただのクラスメイトって感じかな」
「なんて、人だ。お父さん、よく怒らなかったな」
「そうだよね、
アハハハハッと、お母さんは笑った。いや、笑い事じゃねぇ。ひとしきり、笑った母さんは落ち着いて、続きを話した。
「ある日、お父さんが言ったの。ただのクラスメイトだった時、なんとも思ってなかった。その時に……」
「なんて?」
「落ち込んでいる君よりも、他の好きな男の話でも笑っている君の方が良い。最初は嫌だったけど、ずっと
おおっ、どういう意味? 俺は、自分が言われた訳じゃないけど、ちょっと照れた。
「そうすると、今までの5人の男の人に対する気持ちがシュ~と
「えっ、あんなに
「うん。なんか、今までの
「おおっ」
「その時に、初めてお母さんから行ってみたいところがあるって言ったの」
「どこ?」
「車の
「誰が?」
「私が」
「
「ううん」
「初めて、自分の好きなものを言ってみた。今まで、車とか見てみたくて、男っぽいって思われるかなって。でも、この人なら聞いてくれるかなって。怖かったけど」
「それで、行ったの?」
「うん、行った。初めて、心から楽しかった。だから、相手と素直に話してみるって怖いけど、大事な事だと思った」
「そうだね、お互いに怖いよね」
「だから、もし、仲良くなるのが怖いなら、ちょっと
「そっか、その時みたいに、問題や悩みが起きた時に話が出来る相手かどうかも、大事だね」
相手と話をしてみようか、何が不安で、
はじまりの後 水上絢斗 @mizuaya-710
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