第59話 何の感情も湧かない作業だ
神嵐館の見取り図↓
https://kakuyomu.jp/users/kouyadoufu999/news/16818622173453505226
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フゥ。
町谷にとってはここからが本番だ。今までにやったことと言えば、ターゲットたちを適当に翻弄することだけ。手を下したのは自分ではないから、体力はほとんど消耗していなかった。
だが――。
町谷は階段を駆け上がり、自室へ向かった。部屋に入ってバッグをまさぐる。取り出したのは、折り畳み式のノコギリだ。
殺人道具は全部ドッジボールサイズ以内に収めなければならなかった。結構厳しい条件だ。
とはいえ使うものといえば、拳銃とロープ、折り畳みノコギリ、首を串刺しにする用の針ぐらいしかない。全てドッジボールよりはギリギリ小さい。だからなんとか隠し通すことに成功した。
町谷はノコギリを握ったまま部屋を出た。手始めに隣の二〇三号室を訪ねる。
真っ先に目に入ってきたのは、和泉美里の絞殺死体。顔は人ならざるものかのように紫に変色し、その表情は苦悶に歪んでいた。
机の上には黄色い折り紙が放置されていた。何を折ろうとしていたのかは分からない。
さて、重労働の始まりだ。
町谷は美里の肩を土足で踏みつけ、ノコギリの刃を首筋にあてがった。
ゴリ、ゴリ、ゴリ。
死んでから多少の時間が経っているからか、鮮血が一面に飛び散るといったことはない。ドロリとした血液が刃にこびりついてくる。
ゴリ、ゴリ、ゴリ。
ノコギリの動きに合わせて美里の頭が激しく揺れる。どうにも切りにくい。だが、かといって頭を足で踏みつけるわけには行かない。靴底の跡が残ってしまう恐れがある。
どうしたものか。このまま頭が固定されていない状態で最後まで切るのは難しそうだ。
――しかたない。
町谷はベッドと机を移動させ、その脚の間に美里の頭をガッチリと挟んだ。
これでいいか。
試しに先ほどの切り口に刃を当てた。胴体を踏みつけてから、刃を手前に引く。手元がガタガタと揺れはするものの、切りやすくなった。
時間ならまだまだある。台風の目が上空に来るまであと一〇時間ほど。ダラダラと全員の首を切ってもお釣りが来る。
ゴリ、ゴリ、ゴリ。
何の感情も湧かない作業だ。
依頼人の一人が『あなた自身が実行したのだということを証明してください。そうすれば報酬を倍にしましょう。証明の媒体は何でも構いません』と言ってきた。せっかくなら面白くしてやろうと、町谷は媒体にマスコミを指定した。確実に速報で全国放映されるレベルの大事件を起こし、自分は跡形もなく姿を消す。完璧なシナリオだった。
時間はいくらでもある。退屈しのぎにはちょうどいい。
ゴリ、ゴリ、ゴリ――ブチッ。
美里の首の骨が断ち切れ、刃が最後の皮を切り裂いた。一人目は完了だ。あっけない作業だった。
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