第三の被害者 (神々島パート)

第27話 どうするつもりですか?

神嵐館の見取り図↓

https://kakuyomu.jp/users/kouyadoufu999/news/16818622173453505226

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 私はロビーへと歩いていく恵子を追った。恵子は玄関の自動ドアの前で立ち止まった。追ってきたのは私だけだった。他の四人は自分の考えを整理するので手いっぱいだったようで、食堂から出てこなかった。


 こちらを振り向こうとしない恵子に向かって、私は声を掛けた。雨音がうるさいので声は一段階大きく。


「どうするつもりですか?」


 恵子がようやく顔をこちらに向けた。


「溝野ちゃんは優しいわね。私を見捨てようとせずにここまで来てくれて。でももういいの。ここに私の居場所はないもの。みんな私が犯人だと思ってる。じゃあ逃げるしかないじゃない」


 恵子の声は心なしか震えているように聞こえた。本当はこんなことはしたくないのだろう。食堂から出たかった。ただそれだけなのかもしれない。


 恵子は再び玄関の外へと視線を戻し、私に尋ねた。


「傘かレインコートはあるかしら?」


「本気なんですね……。傘ならフロントのところに何本か置かれていたはずです。取ってきますね」


 彼女の返事を待たず、私はフロントの方へと向かった。たしかカウンターの後ろあたりに予備の傘が用意されていたはずだ。


 見つけた。すぐ壊れてしまいそうなビニール傘だが、ないよりはマシだろう。私は二本手に取った。玄関前に戻り、恵子にその片方を渡した。


「どうして二本も持ってきたの?」


 答えは分かっているような口調だった。その通りの答えを返す。


「私も行くからです。遠藤さん一人ではさすがに危険すぎます。私だって脱出できるものならしたいですし。可能性を探るのは正しいことだと思いますよ。無謀だとも思いますけどね。危なくなったらすぐ帰ってきましょう」


 恵子は「ありがとう」とだけ言って傘を開いた。私も続き、二人で自動ドアをくぐった。


 次の瞬間、二本の傘はひっくり返り、骨が全部折れた。ビニール傘で出るのはさすがに侮りすぎだったらしい。慌てて館に戻ったが、体はびしょ濡れになった。


「これは無理ですね。この建物の防音がいいからあまり気にかけていませんでしたけど、外は大嵐です。島から出るどころか、屋外に出ることすら危険です」


「そうみたいね……。台風の位置的にはどのあたりなのかしら」


「さあ。暴風域に入るあたりじゃないですか? 分かりませんけど」


「なおさら無理ね。ごめんなさい、無茶言って。逃げるあてもなかったのに振り回しちゃったわね」


「気にしないでください」


 恵子がほっとしたように胸をなでおろし、浴場がある方へと足を向けた。


「タオル、取ってくるわね」


 私は無言で頷いた。ロビーを出る恵子を見送り、私は一人残された。


 ドックン、ドックン。まだ鼓動が収まらない。


 恵子がどんな無茶な行動に出るのかとひやひやしていた。恵子が予定外の行動に出て計画が狂ったら、――すなわち――は負けるかもしれない。


 私は井口と真渕を殺した犯人を知っている。なぜなら犯人との協力関係を結んでいるからだ。


 二人を殺したのは――


 アリバイがあろうとなかろうと関係ない。奴が犯人なのは事実だ。そして、殺人は終わらない。私以外は皆殺し。

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