第19話 誰かがこちらを見上げている
誰かがこちらを見上げている。その目は飛び出しそうなほどに見開いている。よく見ると、命乞いをしているようにも見える。時が経つほどに、その表情は怒りから絶望へと移ろっていく。でも、口では何も言おうとしない。
どういう状況だ。私は自分の手に目を向けた。ロープが固く握られていた。
ああ、そうそう。井口の首にあった索条痕は、こんな感じのロープだった。
その場の状況は何一つ分かっていないのに、妙に冷静に分析している自分がいる。落ち着いて整理しよう。見上げている人って誰?
目が異常に大きく、顔色は真っ青だ。表情は分かるのに、見た目と名前がぼやけて一致しなかった。性別すら判然としない。
手元に目を戻す。私のロープは、その人間の頭と胴体の連結部分に巻きついていた。
見上げている人の表情が変化していく。怒りから絶望、そして無。無へと変わる瞬間、そこから何かが失われた。
私は相変わらず無感情だった。次のコマでは、私はノコギリを持っていた。どこから取り出したのだろう。そう頭の中では考えながらも、体の動きは止まらない。
息絶えたその人間をうつ伏せに横たえる。背中を土足で踏みつけ、ノコギリを首の付け根に押し当てた。
ゴリ、ゴリ、ゴリ。
歯が食いこむごとに血が噴き出す。だが、手の動きが止まらない。
ゴリ、ゴリ、ゴリ。ゴリ、ゴリ、ゴリ。
ゴトッ。
頭が床に落ちた。私は髪を鷲掴みにする。
そのとき、ノックの音が聞こえた。私は、どこかの部屋にいるらしいことをようやく理解した。音は大きさを増す。
ドン、ドン、ドン。ドン、ドン、ドン――。
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