レゾナンス 断章(超掌編SF)

 その女性――ミノアはクリーム色の服に、緑色のケープを肩にかけていた。


 放射能に塗れた埃を捲いて、風はミノアの藍色の髪をくしけずる。


 ひしゃげた怪物のような、黒いロボットの残骸に右手を置いて、ミノアは微笑った。――たしかに、白い頬に、ひび割れた唇を傾けて。


 クリーム色の手袋には、茶色い百合の模様。



 どこまでも続く荒廃した灰色の大地に、発電施設だけが巨人の墓地の如く、地の果てまで続く。


 量子生体組成技術QOLFT-コルフト。人間が支配者どもと交わした量子暗号署名サインの盟約。


 そんな不細工な言葉が記憶の彼方に消えてゆく。いや、消えてゆくような心のざわめき。――そんな仄かなざわめきを、ミノアの笑顔がもたらした。


 けれど……


 今の汚染された地球上では、コルフトで生成した肉体など、十分ともたない。僕の意識は溶けてゆく。


 そうしてまた僕は、地底へと……。


 地底に広がるコンピュータ・レイヤに。――人々が情報として生きる、へと。



 誰だ? きみは誰だ?


 ミノア…………。なぜあんな場所に?

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水玉と青いサカナ【詩のようなもの】 浅里絋太 @kou_sh

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