このタイミングでなぜか作劇論!
新作の作劇で難航する中で、三幕構成に再度向き合いました。
また、設定工程には僕の「三層コンフリクト法」を当てはめてから、再度三幕構成に当てはめるという工程を踏みました。
その中で、気づいたところなどを少しご紹介します。
念の為原著の、「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術」も、ざっとシリーズ3巻を読み直しました。
▼三幕構成の前提
・シド・フィールド氏が映画脚本向けに提唱した→基本的に決まった尺で終わるやつに適合
・「第一幕 25%(状況設定)」「第二幕 50%(葛藤)」「第三幕 25%(解決)」に物語を分ける
・第二幕の真ん中にミッドポイントを置く
この前提の中で、気づいたところを整理します。
▼三幕構成ではまりがちな傾向
まず三幕構成がうまくはまらないと、以下のような印象になることがあると思います。
・キャラクターの感情や動機が薄い
・第二幕がだれる(中弛み)
・映像偏重・内面描写不足
作劇する中でこれらの問題が顕在化してきたので、それぞれメモしていきます。
▼キャラクターの感情や動機が薄い
三幕構成は基本的に、幕を移動するときに不可逆なハードな事件や動機を置いて移動します。
特にミッドポイントで引き返せない大転機を置く、など。
こういったところから、「外面的な問題解決に適合し、敵を倒すとか生存するとかの話には向いているが、内面の克己や自己受容にはむかない」と思っていました。
たしかに、外的な条件をプロットポイント(転換)に置くことに気を取られて内面の葛藤などが弱まりやすいのですね。
感情の変化をじっくりと書けていないとか。。
ここの感情をしっかりと書くことで、事件と内面を連動させやすくなるのかな、と思いました。
特に、主人公の欠点や課題とテーマを重ね合わせると、テーマに沿った転換を常に置くと、物語が収斂されそうです。
「ラスボス倒す」みたいな目的があるとしても、主人公の内面の問題や葛藤を描けないと、結局すべて薄っぺらくなるのです。
主人公の感情が目的やテーマを貫いているとき、三幕構成は感情移入できる深度に至るのかなと。
もう一つ、三幕構成では深い感情を描きにくい、ということを僕は考えていました。
この点も、やはり「テーマ・感情で背骨と因果を通す」ということを徹底して描くと、十分に深い感情を描けることにも気づきました。
また、第二幕について、『間違った観念での暴走、偽りの成功』みたいな描き方をすると、螺旋的な変容や成長を自然に描くようなこともできます。
▼第二幕がだれる(中弛み)
この三幕構成の第二幕の中弛み問題ですが、あらためて第二幕の時に前半が、非常に扱いが難しいと思うのです。
第二幕は「物語の中心。原著でも(葛藤)として置かれる、主人公の前進のパート」です。
また、真ん中にミッドポイントを置き、不可逆の大転換を置く、とされています。
世の中の教本などですと、「第二幕は自由」「第二幕は抗う場面」「第二幕はミッドポイント中心に盛り上がりを作る」
などの雰囲気で書いてあると思います。
(シド・フィールド原著でも、さわりの部分では、課題に立ち向かう、というくらいの表現)
このため、主人公の苦境を描きながら、割と自由に物語の進行の柱となるエピソードを入れていこう、ってなってしまうと思います。
(僕がそうでした)
でこの方法でいくと、中弛みしやすいことに気づきました。
むしろ特に第二幕の前半(葛藤を明確にして、作品のトーンを打ち立てる)が、物語の起伏を規定する重要なパートです。
ちなみに原著でも「第二幕の膨大な尺を埋めることを前にすると途方に暮れがちだ」みたいなことが書いてあります。(原著2冊目の第十二章)
ここの解決法として「主人公の葛藤や課題を明確にする」と書いてあります。
やはり、内面の定義と扱いが第二幕を引き締め、ひいては全体を改善する重要点なのです。
▼映像偏重・内面描写不足
原著1冊目の第15章が『脚色をする』となります。
ここでは、映画脚本と小説の違いが述べられていて、小説原作を脚本化するときの注意があります。
脚本の考え方を小説に当てはめようとするときは、この逆に注意するといいと思います。
ようはこんなことが書いてあります。
・『小説と脚本は別物である』小説は内面で語る。映画は基本三人称
・小説は言語、映画は映像
などに言及しています。
この論点を取り上げた評論本などありますが、原著に当たってみるのもよいと思います。
(原著では当然、小説原作の映画化視点であり、小説の書き手としては、思考を逆に変換して読む必要があります)
またこれに関連して、三幕構成軸で小説のプロットを立てると、内面や個人感覚や感情の書き込みによるシーンやキャラの立ち上げが疎かになる場合があります。
映像ですと『内面の記述』という概念がありません。
脚本主体のガイドを読む時は、『小説を書くのだから、感覚や感情を叙述して表現する』という転換意識を持ってあたる必要があると思います。
(というか僕自身がかなり、内面を書かず映像にしがち)
とまあ、こんな感じで三幕構成に向き合っています!
また、僕の三層コンフリクト法とのマージの観点としては、やはり、『コンフリクト設計を全体の舞台やキャラ配置』に当てはめて、物語の進行自体は三幕構成にはめました。
これがちょうどよかったです。
念のため。。
三層コンフリクト法 という新しい作劇法
https://kakuyomu.jp/works/16818093094740358683