面白い。読んですぐ唸らされたこの一作。
自信をもっておすすめする。
連作短編サスペンス。現代ファンタジー世界で魔術によって行われる犯罪を舞台に犯人と主人公との駆け引きが繰り広げられる。
が、思うに本作の“面白さ”の肝はそこではない。
それだけではないのだ。
読者を惹き付けてやまないのは、主人公彩夜の恋だ。
ただ愛する人に一目会うために、彼女は犯罪者たちを執拗に追い詰める。
重い……! 乙女の恋心、激重すぎん……?
なぜ彩夜がそこまで思い詰めてるのか、なぜ彼は囚われているのか、――この仄暗く重い恋の行方がめちゃくちゃ気になる。ここに絶対おいしいなにかがあるぞ、と本能が囁く。
(っていうか、お前もうちょっと愛想よくしろ、彼氏!!)
連作短編なので各エピソードは小気味良く読むことができ、かつ恋の謎は徐々に明かされつつある。
さあ、あなたも一緒にこの恋を見届けようぜ!
魔法がある世界観でのミステリーは、非常に成立させるのが難しいわけです。
なぜなら、我々の持つ常識的な前提知識が役に立たないことが、往々にしてあるからです。
その上で、それでも成立させる矛盾のなさを構築しなくてはならない。
実に難しいものです……。
しかし、全くの無理というわけでもないわけです。
蛇の道は蛇、と言わんばかりに、魔術犯罪への見事な推察を見せる主人公、その実力、その胆力、なかなかに底が見えません。
それなのに、その動機は驚くほど乙女。
突き動かす動力源は恋心だというのだから、なんとも無敵感を感じさせます。
……これちょっぴりヤンデレ入ってないか?
確かなものがない中で少しずつ確かなものを手繰り寄せていくような、そんな不思議な味わいの魔法ありミステリー、是非ともお試しいただければと思います。