第5話 ミティアライトの影像 5-⑸
「どうしたんだい天馬君、君の方から僕を呼びだしたりして」
「ふふ、実はですね、今日は久しぶりに「館」を港から出そうと思うのですよ」
「えっ、この船をかい。こんな家を丸ごとのせた船でどこへ行く気だい。まさか海峡から太平洋に出てゆくというんじゃないだろうね」
「ご安心ください。港の中を一周するだけですよ。陸の猟奇的な事件と関わっていると、たまに白波を立てて海風の中に出てゆきたくなるのです」
「――ロープは外したわ、天馬。いつでも出港できるわよ」
螺旋階段の下から安奈の声が聞こえ、建物が大きくゆらりと傾くのがわかった。
「さあ、半刻ほどの遊覧ですが気持ちは大航海です。飛田さんも今からこの『眩洋館』の一員として僕らと運命を共にして下さい」
階下から安奈が姿を現し、流介に「少し揺れますけど、すぐ慣れますわ」と柔らかな眼差しを寄越した。
「さあ、久々の船出だ。僕らの前途に素敵な冒険と輝ける七つの謎がありますように!」
安奈が舵輪を挟んで天馬の反対側に立つと、天馬は「面舵一杯、ヨーソロー」と叫んで船の舳先を水平線の方に向けた。
〈了〉
船頭探偵 水守天馬の冒険 五速 梁 @run_doc
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