第5話 ミティアライトの影像 5-⑷


「さあ、早く行くのです」


 脇腹から血を流して倒れているその男は、私に優しい顔で言った。


「あなたにとがはない」


 ――やめてくれ。そんな目で私を見ないでくれ。


「咎はないのです」


 ――あああ、脇腹から流れる血が、まるで運河だ。火星の運河だ。


「さあ、早く」


 ――ああああ紅い朱い赤い星が、私に近づいてくる。運河が大きく見える。


「行くのです」


 ――あなたは蛸か、それとも烏賊か。ぬるぬるぬるぬるぬるぬる。


「早く」


 ――もう駄目だ、地球はおしまいだ。うねうねうねうねうねうね。


私は己が開けた穴を塞ぐこともできず、血塗れの刃を鞘に収めた。

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