時(とき)

 翌朝。翔はその場所に立っていた。 眠れぬ夜を過ごした目は赤く腫れていたが、髭は剃り落とされていた。


 柱の陰から少女が現れる。 笑顔も、声も、仕草も、三十年前と同じだった。


 過去と現在がひとつに重なり、時間が軋む。 翔は、ただ導かれるように歩みを並べた。


 少女は十七歳。翔は五十歳。 それでも二人の間には、雪解けのような温もりが生まれていた。


 

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