札幌駅。降り立った翔の耳に、少女の声が届いた。


「……お兄さん」


 懐かしい響きだった。三十年前と寸分違わぬ声。 少女は千円を求め、「お昼のパンと帰りの電車代」理由まで同じだった。


 翔は震える手で紙幣を渡した。 少女は微笑み、去り際に振り返って言った。


「明日、ここで」


 その名を告げる声は、翔の心を撃ち抜いた。――純。


 柱の影に、過去と現在の輪郭が重なった。


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